リーチや想起率に終始しない、広告効果の測定方法を紹介
植木:SmartNewsが購買ファネルの課題である「詳細理解」に強いことがわかりましたが、いざメディアプランニングとなると、認知観点での「インクリメンタルリーチ」や、想起率のみの「ブランドリフト」に終始してしまいがちです。この点について、お二人はどのように考えていますか?
磯貝:リーチは、その先の「広告効果」まで含めて語られると、ROIの向上にもつながりそうです。しかし、共通の指標で数値化できないために提案がしにくいと感じていました。
吉田:実は効果の共通指標化は私の研究分野でして、ブランド広告主や代理店から非常に多くの相談を受けています。統計モデルを作って最適化することもありますが、複雑になりすぎる弱点もあります。そこで私は「広告効果=リーチ力×態度変容力」と定義して、その推計された広告効果をベースに出稿配分を検討することを薦めています。
磯貝:この「態度変容力」とは、どのような指標なのでしょうか?
吉田:「態度変容力」とは、たとえば広告を認知した際にユーザーを「Click」や「購買」へ向かわせる力です。ACR/exでは媒体ごとに「広告をクリックする」や「広告を見て関連サイトを確認する」「商品・サービスの購入経験がある」などの指標をとってますので、KPIに合わせて適切な項目を選び算出します。
植木:SmartNewsは「詳細理解」に強いですから、態度変容力も大きいと言えそうですね。
リーチの先にある“態度変容の最大化”を見据える
植木:たとえばTVCMと組み合わせてプランニングした場合、具体的に予算をどのように配分することが最適なのでしょうか。
磯貝:吉田さんのお話された概念に則って、TVCMとSmartNewsを重複させるプランニングを検討してみました。まずリーチ力については「TVCM=1.00」とした場合「TVCMとSmartNewsの重複利用者=0.12」となります。これは単純に利用者数の割合です。
次に「態度変容力」を見た場合、TVCMとSmartNewsを重複させた場合には、TVCM単独と比べて2.07倍になります。ここで言う「態度変容力」は下記のように、ゴールを「ネット広告click」として「広告への受容度」や「クリックのしやすさ」などを加味して算出しています。その結果、「広告効果(=リーチ力×態度変容力)」から割りもどして8:2という出稿バランスが算出されました。
吉田:今回はTVCMとSmartNewsのみで算出していますが、デジタル広告内での割合も同様に算出することができます。このやり方ですとターゲットが明確な場合もそのターゲットに合わせた可視化ができる点で、様々なクライアント様でご活用いただいています。
磯貝:新型コロナウイルスの影響もあり、広告予算の見直しが求められる企業も多いと思います。このように「広告効果」を軸に「態度変容力」が高い媒体とのバランスを加味してプランニングすれば、効果を担保しつづけることも十分に可能ですね。
植木:今日お話を伺っていて、メディアプランの考え方も、大きく変動する感じがしました。現状はまだ「リーチありき」だと思います。「まずはリーチが取れるメディアを抑えて、残り予算でインクリメンタルリーチを狙える媒体に」というように。しかし、結果的に態度変容しなければ意味がない訳ですので、むしろ「態度変容ありき」で考えるべきですね。
吉田:実際、広告主の間では、TVCMをピンポイントで買い付ける仕組み(Smart AD Sales)も浸透しつつあります。リーチのその先にある態度変容の最大化を見据え、メディアが持つ「ユーザー」や「文脈」を買うという意識が高まっていることを感じます。
もちろん、リーチの重要性が大きく変わることはないと思いますが、考え方として「「態度変容」を狙える媒体を確実に抑えた上で、それを起点としてリーチ系メディアを活用する」という、今までとは異なる視点も非常に重要です。SmartNewsの例のように「重複効果」によってリーチ系メディア自体の効果も増幅する訳ですから。
磯貝:最後に、「態度変容ありき」のプランニングを行う上では、どんな点に留意しないといけないでしょうか?
吉田:各メディアや各コンテンツの態度変容上の強みがあること、それを数字で表現できることが大事だと考えています。メディア・エンゲージメントをさらに進化させてコンテンツ・エンゲージメントという目線で数値化できないか、研究を進めていきたいです。
植木:今回、SmartNewsが有する「詳細理解」という態度変容上の強みが数値化されました。当社で今後、詳細理解を生み出す根拠やメカニズムも含めて可視化し、プランニングにご活用いただきたいと思います。吉田さん、磯貝さん、今日はありがとうございました。