食べチョクユーザーの増加に寄与した4つの施策
そんな食べチョクのマーケティングは、食材を買う生活者(toC)と食材を出品する生産者(toB)と、ターゲットが2つに分かれる。生活者向けのマーケティングは、「極めて普通の施策を、スピーディーにひたすら回している」と松浦氏。そのポイントを、「潜在層へのアプローチ」「顕在層へのアプローチ」「Webサイト側の受け皿」「リテンション・ロイヤリティ施策」の4点から解説する。

1つ目は、潜在層へのアプローチだ。2020年7月にiOSアプリのリリースにあわせて放送したテレビCMは、生産者支援を重視し、新規ユーザーの獲得と新規の注文数増加を目的に置いた。「どのようなターゲットに、食べチョクのどんなメッセージを、何のクリエイティブで?」の仮説を、様々なネット広告で検証し、テレビCMのプランニングやクリエイティブ制作に反映した。
合わせて、テレビCMによる大量流入を見据え、Webサイトを最適化。トップにはテレビCMのクリエイティブと同じメッセージやビジュアルをデザインし、テレビCMを見た人のニーズに合わせた商品を掲載した。テレビCMによる相乗効果も見据え、ネット広告やオウンドメディアのコンテンツも強化している。
2つ目の潜在層へのアプローチでは他に、SNSも重視。Twitterでは多くの社員が発信し、食べチョクユーザー、そして生産者との緩やかなコミュニティが生まれている。Instagram公式アカウントでのオーガニック運用では、食材や生産者情報の他、「自分でもできそう」「作ってみたい」とUGCを意識した料理写真を投稿している。
そして、顕在層へのアプローチは、ネット広告運用がメインとなっている。VOC(顧客の声)やデータから仮説を設計し、GoogleやFacebookなどの主要ネット広告をインハウスで運用する。広告では、常に複数の訴求軸を同時に運用し、検証。得られた知見や成功モデルは、媒体を横展開することで、効率的に成果を最大化している。
マーケティングのポイント3つ目は、Webサイト上での情報掲載や企画商品の設計による受け皿の整備だ。ただ生産者や食材の情報を掲載するだけでは、注文には結びつかない。
「トップページは、日々最適化しています。使いやすさだけでなく、ユーザー別に相性の良い商品の掲載、サイト回遊率の向上なども踏まえ、今後も見せ方を工夫していきたい」(松浦氏)
受け皿の施策では、時流に合わせた企画も定期的に行う。たとえば、子育て層に向けた「食育やさいBOX」や、届くまでお楽しみの福袋企画。クリスマス時期の限定商品や、著名なシェフ達とのコラボレーションレシピと食材のセットなど、とても多彩だ。これらは、VOCや施策のPDCAを回す中で得た顧客インサイトを参考に設計しつつ、生産者と強い協力体制を敷きながら企画している。
平行して、定期便のサービスも展開。食べチョクコンシェルジュと食べチョクフルーツセレクトでは、運営が定める品質基準をクリアした生産者の協力のもと、ユーザーの好みに合わせた定期便を届けている。
4つ目のリテンション・ロイヤリティ形成の施策は、LINE、メルマガ、MA、アプリなどの様々なタッチポイントを、総合的に設計することがポイント。そしてロイヤリティ形成には、味噌作りのイベントや、おうちで果物狩りなど、オンラインで実際に生産者とつながる、双方向のイベントを始めている。
