アスクル「LOHACO」は“共創”でメーカーとともにブランドをグロース
はじめに、アスクルのECマーケティングディレクターを務める成松氏より、コロナの影響でどう消費者購買が変化したのか、ECを運営する中で得られたデータとともに明かされた。
アスクルはもともと事業所向けの通販ビジネス一本で展開してきたが、2012年より個人向けの日用品ECサイト「LOHACO」をスタートさせ成長を続けてきた。成松氏はサイトの立ち上げから参画し、現在はLOHACO事業の副本部長としてマーケティングやデータ解析などを管掌している。
アスクル LOHACO 事業本部 副本部長 兼
ECマーケティングディレクター 成松岳志氏2007年アスクル入社。オフィス向け通販サイト「ASKUL」のCRM、プロモーション、新規サービス企画担当を経て、個人向け日用品EC「LOHACO」立ち上げに参画。現在はLOHACOの事業企画・データ解析・プロモーション部門を統括するとともに、デジタルマーケティングサービス「LOHACO Insight Dive」を立ち上げ、ECマーケティングディレクターとして企業間のデータ利活用を推進中。
LOHACOでは飲料・食品やキッチン用品などの日用品のほか、メーカーとコラボした限定商品などを企画開発しているのが特徴だ。顧客層を見ると30~40代の女性の割合が突出して高く、そのうち8割が有職者であることから、「働く女性の日常をラクに楽しくする」を社内のミッションに掲げ、商品や新規ビジネスを考える際の基準にしているという。
コロナ禍においては、巣籠もり消費の高まりを受け全体的な売上も伸長したそうだが、その裏で家事負担が上昇し、たとえば「料理頻度の増加」「家の換気」「ドアノブの除菌」といった困りごとが増えていることが購入者を対象とした調査でわかった。そうした状況が明らかになるにつれ、「ニューノーマルの生活スタイルが生まれる環境で、ECリテーラーとしてどう変わるべきか」という問いに向き合うことになったと成松氏は話す。
「これまで日用品の領域ではECの浸透率が他と比べて高くなく、ECの利用習慣をどう創っていくかを念頭にビジネスのスケール化を図ってきました。ですが、コロナ禍でECを日常的に利用する方々が増えた現在、我々ECリテーラーが担わないといけない役割は、大きく増えたのだろうと認識しています。商品を提供するだけでなく、その商品を使っていかに生活を快適に暮らしていただけるかを突き詰めていく必要性を強く感じているところです」(成松氏)
ひとつの解決策として行っているのが、2014年より取り組んでいるデータのオープン化だ。「LOHACOECマーケティングラボ」の名称で、商品を供給するメーカーを中心にLOHACOにおける購買データや顧客の行動データを共有し、顧客の課題解決に通じる商品開発につなげてきた。同サービスは7年目に入り、現在133社が参加している。また、2020年にはデータ活用の範囲を広げて、メーカーのマーケティングプラットフォームと直接行動データを連携できるようにした「LOHACO Insight Dive」の提供も開始。購買データに加えてレビューデータとの連携や分析サービスなどを提供しており、利用企業は自社の活動にも自由に利活用できる。
先述のコロナ禍の生活における困りごとに対しても新たな商品が開発されている(図表1)。
たとえば、日本製紙クレシアの「スコッティファイン 洗って使えるペーパータオル極厚手」。これはもともと洗って再利用できるキッチンペーパーだが、手軽に交換できると掃除用途にも用いられるようになっている。しかし除菌のためにテーブルなどを拭くときに、厚みが少し足りないという消費者のインサイトを掴み、極厚手タイプのものをLOHACO限定で販売するようになった。また、花王の「ビオレu 手指の消毒液」は、家庭でアルコール除菌が習慣化される中で、家のインテリアに馴染むデザインボトルを置いてもらいたいと、有田焼の窯元で絵付け・窯焼きした原画をボトルに転写したパッケージデザインで売り出し、高い満足度を得ている。
「流通とメーカーが一体となって、消費者の困りごとに対して新しい市場を創造する。そのために我々の次なるミッションは、お客さまとメーカーをつなぐ共創プラットフォームへの進化です」と成松氏は語った。