コロナ禍のピンチはチャンスになった
コロナ禍やパンデミックがAR市場の成長を加速させている面もあるという山内氏。コロナ禍での「人混みを避ける」「非接触」「自宅で過ごす」という3つのキーワードにおいても、ARなら新たな価値を生み出せると話す。閑散とした観光地域や公共の場に非接触でも楽しめるイベントなどを創り出すことができ、急増する巣ごもりのニーズに応え、自宅のなかのエンターテイメント性を高めるコンテンツも創出できるという。
また、コロナ禍ではできなくなったことをARの活用で解決している事例もあるという。たとえば、化粧品業界で商品のテスターが置けなくなり試しづらい状況においても、ARを使用すれば自分の肌にのせたときの疑似体験ができる。またインテリア業界でも、ユーザーが自宅で家具や雑貨の設置イメージを見ることが可能に。サイズ感も実際に置くのと遜色がなく、自宅で部屋に置いた様子を具体的にイメージしてECサイトで購入できる。
DXの推進で逆境をはね返した企業の共通点
スターティアラボでは、2018年にWebマーケティング事業を分社子会社化し「Mtame(エムタメ)」を設立。Mtameが支援してきたなかで発見したという成功企業の共通点は、「直近の売上を作る施策と中長期的に売上を底上げする施策の2つの軸を持ち、リアルからデジタルにシフトしていること」だという。山内氏は事例を基に説明した。
1つ目は、大阪江坂にありB2B向け社内運動会を提案するバウンスクリエイティブの事例。リアル運動会を企画する会社ゆえコロナの影響を多大に受け、一時期予約はすべてキャンセルになったという。しかし、そのタイミングでいち早くオンライン運動会に舵をきりLPを改修、コンテンツ作成を実施し、オンラインにシフトした。
その結果、NHKなどのメディア取材があり、関東の大手企業からの問い合わせが急増するなど好調に。緊急事態宣言前後で比べると月間の問い合わせ件数が5件から23件と4.6倍に増加したという。
2つ目の100均店舗向けに生活用プラスチック製品を扱うサナダ精工では、展開する商品「フタとま」がタミヤの「ミニ四駆」のケースとしてシンデレラフィットすることで爆発的に売れ、ミニ四駆業界のシェアを席巻している。同社では、ユーザーが見つけた意外な商品の使用方法から、商品開発を見直すこともあるという。定期的なSNSキャンペーンは、販促強化だけでなく新規顧客への足がかりにもなっており、既存顧客からのクチコミ投稿拡大施策にも取り組む。
また、芳武印刷のケースでは、2019年9月にサイトをリニューアル。最新のトレンドを取り入れて、検索評価されやすいように工夫したほか、コンテンツ発信のブログを新設し、月2~3記事をコンスタントに追加していった。コロナ禍のなか、抗菌印刷の視点からマスクのつけ方や保管方法をまとめた記事から爆発的にアクセスが伸び、アクセス数が前年比で140倍、月間の問い合わせが0件から98件に増加。ひとつのコンテンツの集客力、売上貢献の成功を体験した社長は、現在Twitterでの情報発信に尽力しているという。
「次のフェーズとして、MAツールを活用したDX推進、流入した企業を可視化することによる効率的なアプローチにも取り組んでいただいています」と山内氏も意気込む。