テレビ×デジタル時代の広告とデータ取得
そして放送が引き続き強いということは、広告主にとっても良い話だと言えます。サブスクモデルのSVODにはそもそも広告枠がないので、視聴者によく見られたとしても、広告主にとって出稿の機会がありません。旧来よりテレビ局が担っていたマス広告の役割が、緩やかな変化はあっても、まだまだ急遽に変わっていくということにはなっていません。とはいえYouTubeを始めとしたAVODが視聴者のアテンションを捉えてきた中、そこへの広告投資をどうすべきか。テレビ対デジタルという既存の考え方に当てはまらない、このテレビ×デジタルの部分の捉え方を悩ましく思っている広告主も現状では多いでしょう。そのためにも、もはやテレビ対デジタルという軸ではなく、テレビデバイスという軸で切り直し、そこに映るものは放送・OTTとかまわず横断的に視聴を捉え、評価する仕組みが必要となってきています。
また、テレビの最大の特徴の一つが、マルチ・パーソン・デバイスということは前述にて触れました。実はそれこそ、ユーザーデータを自由自在に活用してきたデジタルの弱点でもあります。パーソナル・デバイスでは、誰が視聴しているのが特定する必要もなく、そのデバイスの持ち主であることは自明でした。一方で、テレビの前に誰がいるのか。既存のデジタルのデータ収集では、この部分が大きな欠落として残ります。そういったデータの整備は、現時点でもまだ整っている状態ではありませんが、その分、大きなポテンシャルを秘めているとも言えます。テレビ放送とデジタルの間では、リーチの定義一つをとっても、同じ単位では出てくることなく、多くの広告主を悩ませてきました。その融合は、テレビ×デジタルが大きなきっかけとなり、今加速を続けています。
テレビの前に誰がいて、コンテンツを注視している。TVISIONINSIGHTSが取得してきた視聴「質」も、まさにこのリーチの定義という課題に向き合ってきました。マルチ・パーソン・デバイスであるゆえに、デジタルの1インプレッションが複数人に当たっているというような、今まで見えて来なかった価値も見えてくるようになっています。テレビ×デジタルの時代、変化を見極め、促進していく。そのためにも、ここで述べたことが皆様の考えるヒントになれば幸いです。