その施策は本当に“顧客との関係性構築”につながっているか?
MZ:松井さんと虻川さんはMA活用についてたくさんの優れた事例をご存じだと思います。成功事例を踏まえ、MAで成果を上げられているマーケターの共通点はなにかありますか?
松井:「MAで成果を上げられているマーケターの共通点」と聞いて、まず浮かんだのは、顧客との関係性構築について“本質的な”取り組みができているか否かです。
私自身の経験からお話しすると、前職で勤めていた企業でメールコミュニケーションの在り方をゼロから設計し直したことがあります。セミナー集客マシンから脱却し、メールをお客様の行動を促す最大のチャネルとして、よりよい関係性の構築につながるように変えていきました。
MZ:どういった課題感から取り組まれたのですか?
松井:当時は多い時は週に3~4回、同じ人に集客メールを配信してしまっている状況で、配信する立場としても心苦しい気持ちがありました。そこで、まず最初に「1人の人にメールをお送りするのは週に2回」というルールを作りました。
次に、イベントの集客のためだけのメールを制限し、集客中心のコミュニケーションから、情報提供型のメールコミュニケーションに切り替えました。すべてのメールにテーマを設定し、そのテーマにまつわるブログ、ホワイトペーパー、セミナー案内を掲載することで、お客様自身でインプットする情報の量とかけられる時間を選択できるようにしたのです。ブログを読むのは3分、より詳しい情報が得られるホワイトペーパーを読むのは5~10分、じっくり理解を深めるセミナー受講は1時間という具合ですね。
興味のあるテーマをご案内しても、忙しい中メールを開き、そこからコンテンツに触れていただくのにはやはり工夫が必要です。ライトなものから、たっぷり情報を詰め込んだものまで、受け手のその時の状態に最適なものを選択していただくようにしました。
担当領域だけに限定せず、自分のバリューを発揮していく
MZ:集客メールの配信を制限するとなると、セミナーの企画担当者との衝突が起こってしまいそうです。
松井:そうですね。私の場合は、メール配信における社内のコミュニケーションから変えました。たとえば、「イベントを開催する1ヵ月半前までには配信依頼を下さい、依頼をいただいたら1ヵ月前までに1回目のメールを、2週間前までに2回目のメールを送ります。集客の数が目標に及ばなかった時のリカバリーは我々が担保するので、配信日はコントロールさせてください」と伝えました。内容がセミナー告知のみのメールを配信するのは、1つのセミナーにつき2回までとして、一連のルールを決めたのです。
すると、1ヵ月半前までに依頼しないと集客メールを送ってもらえなくなるので、セミナーオーナー側も余裕をもってプランするようになりました。開催直前になって集客が足りず、「明日このセミナーの集客メール送ってくれない?」と私がまったく知らないセミナーの集客依頼が来るようなこともなくなりましたね。セミナーもコンテンツのひとつとしてメールコミュニケーション全体を設計し、計画的に配信できるようになったことで、配信のスケジュールが常に1ヵ月先まで決まっているという理想的な状態を作ることができました。
メール配信担当者の中には、自分の日々の業務に対して“依頼される仕事”のような感覚を持っている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、決してそうではなく、メール配信でもチームを先導して、顧客とのコミュニケーションを作り出すことはできます。マーケターとして成果を上げることもできるので、諦めずに自分のバリューを発揮してほしいですね。
虻川:松井がメールコミュニケーションの在り方をゼロから設計したように、ユーザー様のお取り組みを見ていると、SFAのオペレーションやデータ整備の仕組み・ルール作りなど、データ活用の基盤を整えるところから取り組まれている方が多いように思います。
具体的な例として、とあるSaaS企業では、インサイドセールスが見込み客の行動に即した適切なタイミングでフォローできていないという課題がありました。そこで、SFAとMAを連携させ、SFA上での顧客情報の重複を限りなく減らす仕組みを構築。加えて、インサイドセールス担当者のアサインルールを自動化することで活動量を最大化させ、商談件数を大きく伸ばされました。
また、とある人材業界の企業では、デジタル広告の就業への貢献度が測定できないという課題をお持ちでした。そこで、広告データ・MA・自社のデータベースを連携させ、広告効果を一気通貫で測定できる環境を整えられました。これにより、効率的な媒体選定が可能になったそうです。
自分の担当領域に限らず、MAに蓄積されたデータを使って様々な課題の解決を考える。部分最適ではなく、全体最適のためにMAのデータを活用することを考えているマーケターが事業に貢献する形で成果をあげている印象がありますね。