国内外でのABXの推進事例
続いて、筆者が取材した国内外のABM・ABX推進事例を紹介します。
Sitecore(サイトコア)
Sitecoreは、「シームレスでパーソナライズされた関連性の高い“コネクテッドエクスペリエンス”を各顧客に提供すること」を全社的なミッションに掲げています。これに基づき、収益を生み出すチームを部門横断的に連携させることで、組織全体の成長とイノベーションを加速させる戦略的なイニシアチブをABX戦略と位置づけています。
同社のABXプログラム全体の目的は、アカウントとの間の関係性、評判、信頼を高めることで、ターゲットとなる企業における収益を上げ、フットプリント(商談)を増やすことです。組織全体でABXに取り組むことで、コネクテッドエクスペリエンスを支えるシームレスなエンゲージメントを実現しているのです。
SitecoreのABX戦略は、購買サイクル全体におけるアカウントの体験を調和させます。それはアカウントがSitecoreを知る前に始まり、ファーストコンタクト、そしてアカウント内の複数のステークホルダーとの関係を長期にわたって一貫して発展・育成させるまでを包括しています。
Sitecoreのマーケティング&ビジネスリーダーVeronica Mikhail氏は「先進的な企業は、ABXを導入することで主要顧客の理解を深めマーケティングを最適化し、新しいプロセスや技術を採用して、ブランドプロミスを果たしている」「企業がサイロ状態の組織で仕事をしている余裕はもはやない」と述べています。
また、ABX戦略の実行を担うアカウントベースドマーケティングディレクター、Lauren Bishop Vranch氏は次のようにアドバイスしています。
ABXの導入には組織の準備(Readiness)が整っている必要があります。SitecoreではまずABXジャーニーを描き、その基礎、データ、テクノロジー、従業員と収益ゴールを紐づける仕組みづくりに取り組んできました。既製服のような誰にでも合わせられるABXというものは存在しません。これまでの経験から、企業のトップから従業員までABX戦略がいきわたるためには半年から8ヵ月の時間がかかると想定され、それには継続的な投資が必要です。

(右)同社で戦略実行を指揮するアカウントベースドマーケティングディレクター Lauren Bishop Vranch氏
デル・テクノロジーズ
デル・テクノロジーズでは、国内中堅企業を対象にした「IT投資動向調査」を継続的に実施し、現在の顧客像から見込み客層のステージを把握、次に進めるためのサービス開発を行っています。
今年3月に発表した調査結果では、2021年のIT投資としてコロナ前の結果では圏外だった「経営判断に必要な情報やデータの可視化」を検討・計画する企業が急浮上し、21.7%を占めました。また、「事業変革」「営業変革」「働き方改革」の3つの分野でDXに対する取り組みが加速し、これらを積極的に推進する企業ほど迅速に業績を回復しているという実態を把握しました。
これに従い、中堅企業がデジタル技術活用により新たな収益源を創出できるよう支援するため、奈良先端科学技術大学院大学およびdToshと協同で進める「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」プロジェクトで蓄積したノウハウを基に、両社ならびにDN Technology & Innovationとの4社による定額制のDXコンサルティング サービス メニューを新たに提供しています(プレスリリースより)。
顧客課題の解決のための戦略のもと、本末転倒なマーケティングの戦術に走らず、見込み客の購買ライフサイクルに合わせた変革体験を促進する取り組みです。
さらにデル・テクノロジーズは、女性が経済成長における強力な役割を果たせるよう支援するデル女性起業家支援ネットワーク(DWEN)を運営。環境、持続性、多様性と調和、社会コミュニティ貢献、ガバナンスにわたる中期計画ムーンショットを策定しています。こうした活動が、様々な企業の模範、参考となりSDGs先駆者としての信頼性を醸成して、マーケティング施策がもたらす体験の変革を推進しています。
これらは、マーケティング推進のために広報部門、営業部門などが協力し、リードを育てて商談化するサイクルの潤滑油となるブランド、口コミ、紹介を醸成する活動の一例です。
