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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

本丸は、社内のカルチャーを変えること 他社への展開も見通す、富士通の本気のDX

経営と現場をつなぐ考え抜かれたPJ体制

――では、福田さんが参画されて計画した、富士通のDXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」の全体像を教えてください。

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 大きく掲げているのは「IT企業からDX企業への変革」です。ITによってお客様の課題解決や競争力を向上させる取り組みを支援する企業から、デジタルで変革を起こす企業に変わる、ということです。「顧客の支援」と「変革を起こす」では、自らの立ち位置や価値観、顧客との付き合い方、提供する価値など、だいぶ違います。自分たち自身がまず変わらないと、そのような立ち位置にはなれません。

 変革の領域は、経営戦略や事業そのもの、マネジメントスタイル、人事制度やカルチャーなど多岐にわたります。そして、これらを目的とした変革の手段として、ITやデジタルは戦略的に活用する格好の武器になります。勘違いしてはいけないのは、あくまでもITやデジタルは手段だということです。それ自体が目的になってはいけません。社内で何か“変えよう”としていることなら、すべてフジトラです。

 大事にしていることの1つは、経営と現場が一体となることです。そのため、プロジェクトリーダー・CDXOである社長の時田のリーダーシップはもちろんですが、現場のフォロワーシップも重視しています。「VOICE」というデジタルプラットフォームを通じて頻繁に現場の声を吸い上げ、施策に反映しています。「全員参加」は、フジトラの大原則のひとつです。

 とはいえ、さすがに13万人の社員がいると、経営と現場を簡単にはつなげません。そこで、間にふたつの層を設けています。ひとつは、CEO室に設けた「DXデザイナー」です。様々な部門から専任または兼務でメンバーを集め、フジトラにおける各プロジェクトの企画・設計や推進を担っています。本当にデザイナーにも参画してもらっていて、「デザイン思考や共感」を重視して企業変革そのものをデザインしています。

 もうひとつは、「DXオフィサー」です。事業部門やコーポレート部門、海外リージョンやグループ会社など含めて、主要な部門から一人、DXの責任者を出してもらい、横で連携しています。35名ほどのDXオフィサーが密に連携することで、大企業特有の部門の論理や壁を乗り越え、変革を主導する役割を担っています。

 さらに現場サイドには約6,700人が参加するフジトラのSNSコミュニティがあり、非常に活発に活動しています。

――なるほど、CEO直下でありながら、横の連携も十分に図れるようにあらかじめ緻密な体制が組まれているのですね。マーケティングの世界でも部門ごとの分業化が進み、横の連携の弱さが指摘されるので、とても参考になります。

 日本企業は変わりにくいと言いましたが、いいところもたくさんあります。先輩や年長者を敬う、縦のカルチャーは、そのひとつですね。ただ、横の連携が弱い。日本は元々協力し合うのは得意なのだから、仕組みや体制さえあれば、勝手に連携してくれると考えたのです。

社内の声を可視化する「フジトラVOICE」

――具体的なプロジェクトについてうかがえますか?

 たとえばEX(Employee Experience)領域では、「Work Life Shift」と呼ぶ、働き方とオフィスのフルモデルチェンジを実施しました。出社して仕事をするという常識が変わったので、オフィスの存在意義や在り方を考え直し、人と人とがコラボする場だと再定義しました。カフェのようなリラックスした雰囲気にしたり、グループで立ったままミーティングやデザイン思考セッションができるよう、ホワイトボードを各所に置いたりしています。

 VOICEによって集めた社員からの声を背景に、ワーケーションの制度を作ったり、単身赴任の解消などにも取り組んだりしています。昨年5〜6月、比較的早い時期に、全面的に働き方やオフィスの在り方を見直す意思決定ができたのは、やはり社員の声やデータの力が大きかったと思います。約85%の社員が「従来の働き方には戻りたくない」と答えたのは大きかった。

 一方で、リモートワークで生産性が上がったかという質問には、当初は、上がった人25%に対して下がった人が35%という結果でした。ここは具体策を打っていかないといけない。金銭補助による社員の自宅のリモート環境を整備する後押しや勤務ルールの変更、コミュニケーション方法の改善など、VOICEを活用して様々な手を打っています。社員がいろいろと教えてくれるので、それを、逐一施策に落としていく。まさに経営のリーダーシップと社員のフォロワーシップの共同作業です。

――こうやって数字や生の意見が可視化されると、次にどのような方向でドライブをかけていくべきか、よくわかりますね。

 そうですね。従来のように、経営が何もかも判断して現場におろす方法は、正解のない時代・変化の時代には難しい。現場に「皆さんどうですか?」と聞き、アイデアやフィードバックを受け付けて施策化する、というサイクルだと思っています。VOICEは、様々なテーマで活用されており、既に500回以上実施しました。

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DXの本丸はカルチャーの変革

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/25 06:30 https://markezine.jp/article/detail/37521

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