DXの本丸はカルチャーの変革
――まさに、先ほどおっしゃった「全員参加」ですね。
はい。現場に聞きながらトライアル&エラーを繰り返し、うまくいきそうな施策はどんどん進め、イマイチならやめれば良い。これも日本的なところですが、トライアル&エラーがやりにくい文化がありますよね。そんな雰囲気や仕組みも、変えていきたい。
DXの本丸は、カルチャーを変えることだと考えています。時代に合わせて自らを変え続けることができる企業体質に変わるのが、フジトラの最終的な目標です。
――様々な業界のDXの話を聞いていると、部門をまたいだ横の連携ができないこと、そしてトップダウンとボトムアップのバランスが図れないことが共通の課題になっていると感じます。また、トップが率いているといっても、形式上のケースもあります。その点、富士通ではとても理想的にプロジェクトが進行しているように見えますが、元々トップの理解やボトムアップの文化があったのですか?
まず、DXに対する時田の強い意志は大きい。「VOICE」も、名付けたのは時田なんです。経営が独善的に変えるのではなく、社員の声、また顧客やサプライヤーの声を頼りに、皆で話し合いながら変えていこうという考えがベースにあります。

社長就任直後、まだ何をするかも決まっていない段階で、日経新聞に「変革」を大きく宣言する全面広告を打ったのも印象的でした。決して名前だけのCDXOではなく、しっかりと時間もエネルギーも使ってもらい、矢面に立ってくれています。
ボトムアップについては、元々現場がしっかりしていることに加え、声をあげやすくすることを心がけていますが、実際にはまだまだです。カルチャーが変わり、どんな変化に対しても自らを変革していけるようになったら、そのときはフジトラが解散するタイミングです。
パーパスの言語化に13万人全員が取り組む
――なるほど、いずれ解散することがゴールだと。
そう考えています。まだまだ進行中の施策がたくさんあるので、もう少し先の話ですね。たとえば今、「TOPFIRST」というプログラムを進めています。「あなたのパーパスは何ですか」というセッションを、経営トップの時田から順番に、全社員に展開する、というものです。
自分のパーパスを見つめ直し、他者のパーパスを理解して変革に結びつける対話型の組織マネジメントで、「パーパス・カーヴィング」と呼ばれます。現在3,400人ほど終わりましたが、来年3月末までに13万人の社員全員を終える計画です。
経営の本気度を皆に共有する、あるいはカルチャー変革をリーダーが率先して示すために、週1で社内ラジオ「フジトラRADIO with Leaders」も放送しています。毎回、順番に役員をゲストに迎え、パーパスから子ども時代の話まで、話してもらっています。
――トップから現場まで、非常に活性化している様子がよくわかりました。最後に、全体の構想では今何合目くらいか、そして今後の展望についてお聞かせください。
まず、歩みとしては3合目から4合目に差し掛かるくらいでしょうか。麓にいた頃とは明らかに見える景色が変わり、今さら下りることはないだろう、と。ただ、まだ感動するほどの景色じゃないし、13万人もいると、まだ隊列の後ろは麓にいたりします。全体としても、まだ半分にも満たない。ここからの中盤が、山登りの勝負でしょう。
ひとつの目安としては、経産省が提示している「DX推進指標(※1)」において、再来年2023年4月に、5点満点中3.5点を満たすことです。日本を代表するDX事例のポジションを意味しており、世界にも誇れる取り組みを目指す目標になります。もちろんもっと上を目指すつもりですが、いったんのチェックポイントとして。フジトラが早く発展的に解消できるよう、全員参加で進めていきます。
※1 経済産業省「デジタル経営改革のための評価指標」