手抜き・手間抜き論争で拡散力の高さを実感
MarkeZine編集部(以下、MZ):御社のマーケティングにおけるTwitterの役割を教えてください。
谷:元々Twitterは45周年のイベント告知を目的に、「ギョーザ」ブランド専用のアカウントを立ち上げたのが始まりです。しかし、イベントの告知以外の発信ができていない状況でした。
2020年、弊社はTwitterの活用を本格化しようと決意し、同年2月に味の素冷凍食品のTwitter公式アカウントを立ち上げました。同年夏に「冷凍餃子を食卓に出すのは手抜きだ」というツイートに対し「冷凍食品を使うことは、手抜きではなく『手間抜き』ですよ」と公式アカウントで発信したところ、多くの反響を頂き「手抜き・手間抜き論争」が勃発、冷凍餃子が世の注目を集めたんです。
そのとき、Twitterの持つ拡散力の大きさを実感し、冷凍食品の便利さ、おいしさを伝えるためにTwitterの活用を推進しています。
若年層へのリーチ強化を目的にTwitter広告を活用
MZ:2020年から活用を本格化したとのことですが、その理由はなんだったのでしょうか。
谷:マスメディア離れがささやかれる中、新たなコミュニケーションの方法を模索していました。いろいろな層の方、特に若年層の方へのアプローチが急務と捉え、双方向でコミュニケーションが図れるTwitterがぴったりだと感じました。
そこでTwitter公式アカウントを立ち上げ、手抜き・手間抜き論争を経て、今度は広告も駆使してアプローチしようと試みました。これまで我々のコミュニケーションはテレビCMが主体でしたが、2021年4月にクリエイティブを大きく刷新したタイミングで、より多くの方に届ける施策が必要でした。
当時は新CMの発表会やPRイベントを開くのも難しい状況だったので、Twitter Japanの石橋さんと斉川さんに相談し、Twitterを活用した施策の実施に至りました。
MZ:新しいクリエイティブとTwitterの相性が良さそうだった、ということでしょうか。
谷:主婦層をメインターゲットとしたクリエイティブを制作したのですが、Twitterであれば20代から30代の主婦層にリーチが取れるのでは、と考えていました。
トレンドテイクオーバープラスで新CMの認知を獲得
MZ:では、実際にどのような施策を行ったのか教えてください。
谷:テレビCMの放映を4月16日にスタートしたのですが、Twitterはそのティザーと放映開始後のリーチ拡大に活用しました。
まず、4月5日からテレビCMが新しくなることをTwitterで発信しました。さらに、4月11日にはトレンド欄に動画広告を掲載できるトレンドテイクオーバープラスを活用し、新クリエイティブの存在を多くの方に届けました。また、ビデオウェブサイトカードを使って、CMとは別バージョンのWeb動画を配信しました。これらの施策をテレビCMの放映前に行うことで、4月16日の認知と話題の最大化を狙いました。
さらに、4月16日以降はテレビCMと同じ動画広告を20代から30代の主婦層に届きそうなキーワード、興味・関心のターゲティングでリーチし、広告との接触頻度を高めました。
MZ:Twitter Japanは今回の施策実施にあたり、どのような支援を行ったでしょうか。
石橋:実施前には他社様の事例やクリエイティブ制作のポイント、またTwitter上の会話の価値をご説明させていただきました。そして、施策実施にあたっては、リーチと発話が最も促しやすいトレンドテイクオーバープラスの提案をさせていただき、Twitterが提唱するティザー・ローンチ・サステインのフェーズでどのような施策を行うか設計のフォローをさせていただきました。
Twitter広告のROIが高いという結果に
MZ:今回の施策実施におけるKPIはどこに設定したのでしょうか。
斉川:会話量やSOV(Share of Voice)をKPIにすることで、さらなるリーチ拡大と、購入意向が高まることを期待しました。
谷:今回の取り組みにおいて、ポジティブな内容のツイートがどれだけTwitter利用者の方から発せられるかはとても重要でした。新しいクリエイティブには、ギョーザがとにかくおいしそうであること、そして家族の食卓に堂々と出せる商品であることを伝える狙いがありました。そのため、ハッシュタグは「 #今夜はギョーザがいいんじゃない 」にして、ギョーザをその日食べたくなったり、そのハッシュタグを起点に会話が生まれたりしたら良いなと考えていました。
また、味の素冷凍食品のギョーザにはコアなファンの方が付いてくださっているので、その方たちの発話を促せると思っていましたし、今回のハッシュタグが実際に広がりを見せていました。
斉川:トレンド欄のトップにクリエイティブとハッシュタグを掲載したことで、発話を大きく促せたと考えています。また、ビデオウェブサイトカードではカンバセーショナルボタンを設置いただき、そのボタンを押してツイートしていただくと、限定の動画が見られる仕組みを用意しました。これも会話量の増加につながりました。
オリジナルツイート数、SOVが上昇、出荷にも好影響が
MZ:施策によって得られた成果について教えてください。
谷:KPIとしていたオリジナルツイート数とSOVは良い結果となりました。特にSOVに関しては、通常時の2倍近くシェアが増加し、手抜き・手間抜き論争が起きた2020年8月と近い水準の会話量となりました。
また、購入に関しても、2020年下期平均と比較して出荷が増加していたことから、ギョーザブランドを盛り上げる施策として非常に良かったと思います。購買パネルデータを使った調査では、冷凍餃子を1年近く購入していないカテゴリー新規エントリー層の購入が増えていることもわかりました。
石橋:現在、食品業界におけるTwitter活用はまだこれからという状況だったのですが、今回の取り組みは業界に対するインパクトが非常に大きかったと感じています。この業界はテレビCMに対する予算が大きいので、Twitterでこれだけ大型のキャンペーンをしたことで他社からの注目も集まっていました。
MZ:他の媒体と比較したときに、Twitterのどこが良かったと思いますか。
谷:今回の取り組みでTwitterが非常に生活者との距離が近いメディアだと感じました。手抜き・手間抜き論争の実績があったのもありますが、SNSで注力するならまずTwitterからだと思っていました。
デジタル広告は、出稿しても購買につながったかどうかの実感値が得られにくいと感じていました。しかし、マーケティング・ミックス・モデリングで分析したところ、TwitterのROIがとても高かったんです。Twitterがそれだけ購買に近い場所であるということが、今回の取り組みでわかりました。
周年のモーメントを活かした施策を
MZ:最後に、今後の展望を教えてください。
谷:今後も購入個数をいかに増やしていけるか、特に若年層の購入者をいかに拡大できるかが重要になってきます。その中で、Twitterの活用は不可欠だと思っています。具体的には言えませんが、Twitterの広告出稿量というのは増えていくはずです。
そして、今回の取り組みを超えるおもしろい仕掛けを行いたいと考えています。特に味の素冷凍食品のギョーザは2022年の3月で発売から50周年を迎えるので、50年間支えていただいたお客様に感謝を伝えたいですし、それにTwitterを絡めたいとも思っています。これから構想する段階ですが、50周年のモーメントを活かし、生活者を巻き込んだ話題化に今後も取り組みたいです。
石橋:味の素冷凍食品様のTwitterの活用はまだ始まったばかりで、伸びしろがとてもあると思っています。また、Twitter上に餃子ファンは多く、話題にもなりやすい商品なので、今後も話題作りをサポートしていきたいと思います。そして、ギョーザブランドでの成功事例をもとに、他の商品のキャンペーンも支援させていただきたいです。
斉川:Twitterには数多くのプロダクトがあります。今回はトレンドテイクオーバープラスを軸にした施策でしたが、今後は他のプロダクトも組み合わせてより施策の効果を高めるご支援ができればと思います。