※本記事は、2021年11月25日刊行の定期誌『MarkeZine』71号に掲載したものです。
パーパスを具体化するための2つの問い
株式会社博報堂/株式会社SIX 戦略CD/UXデザイナー 藤平達之(とうへい・たつゆき)氏
神奈川県出身、1991年生まれ、2013年博報堂入社。クリエイティブカンパニー・SIXにも所属。ブランドパーパスと生活者のインサイトを組み合わせてコアアイデアを生み出し、あらゆる領域で顧客体験を形にする。サービスやプロダクト開発の経験も多く、投資サービスやIoTプロダクトなどを担当。自身のアプローチを「PJMメソッド」として体系化し、「ad:tech tokyo 2020」への登壇など、講演・寄稿も多数実施。これまでに、「2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 総務大臣賞/ACCグランプリ」などを受賞。仕事中はフィナンシェと炭酸水が、仕事終わりはクラフトジンが相棒。
――パーパスという概念はいろいろな解釈の仕方ができるように思います。藤平さんは、パーパスをどう定義されていますか?
最もシンプルに言えば、「そのブランドの存在意義・志」と定義しています。ただ、いきなり「何のために存在しているのか?」と考え出しても、そう簡単には答えられないですよね。そこで、クライアントとのプロジェクトやワークショップなどでは、次の2つの質問の回答から、パーパスに迫っていきます。
1つは、「そのブランドは社会/生活者にどんな“いいこと”を増やせるのか?」。もう1つは、「そのブランドは何を愛するプロなのか?」という質問です。具体的にいいことを考え、自分たちが大切にするものを考える。これらを掛け算すると、決まりやすいと思います。
――パーパス・ブランディングが急激に広がっている現状を藤平さんはどうご覧になっていますか。
私がパーパスに着目し始めたのは、2016年の終わり頃です。当時、日本にはブランドを重視してマーケティングに取り組む企業が少ないことを課題に感じていたので、海外で主流になりつつあったブランドパーパスの可能性を個人的に探り始めました。ただ、当時は、パーパスの話をしてもほとんど取り合ってもらえませんでした。「また新しい横文字だね」と(笑)。ですが今は、本当にたくさんの方がパーパスという言葉を使っていますよね。その機運が生まれていることは、とてもポジティブに捉えています。
一方で、これだけパーパスが広まってくると、「パーパスウォッシング(表面的で実態が伴わないこと)」の問題も出てきています。パーパスに限った話ではありませんが、マーケティングやブランディングの手法は、一時の流行で終わるものが多い。相対的にパーパスのブームは「長い」と感じていますが、今、定着するか消えていくかの過渡期にあると思います。