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特集:きれいごとで終わらせないパーパス・ブランディング

パーパス大流行の背景 過渡期を迎えた今、企業に求められる条件

パーパスは「SAY」だけでなく「DO」が大事

――パーパスが消費行動における判断材料になる、という流れも出てくるのでしょうか。

 ミレニアル世代やZ世代向けのグローバル・リサーチを見ていると、ある程度、その流れは出てくると思います。そういった中で、個人的にいま注目しているのが「パーパスプレミアム(パーパスによって上乗せできる価格のこと)」です。たとえば、「普通の水は100円だけど、こんなパーパスを掲げているうちの水は500円」と打ち出したとき、500円の水を選ぶ人はどれだけいるでしょうか?

 パーパス&プロフィット(志と利益の両立)という言い方もされますが、「パーパスをいかにマネタイズしていくか」が、これからは焦点になってくると思います。

 私は、いいパーパスの条件として「いいね!の法則」を提唱していました。掲げたパーパスに対して、「どんな人から」「どんなコメントとともに」いいね!がもらえるかが重要であり、そこを考え抜くことが大事だといった内容です。パーパスブームの初期は「いいね!がもらえるパーパス」で良かったように思います。ですが、これからは、それでは中途半端になってしまう。「いいね!はもらえるけどまったく売れない」ということを避けるべく、「いかにビジネスに貢献できるか?」という点に、シビアに向き合っていくことが重要です。

――最近はパーパスを訴求する広告をよく見かけるようになりました。そもそもパーパスは、対外的に発信する必要があるのでしょうか。

 パーパスは策定してからが始まりで、パーパスプレミアムが今後の論点になってくる。そうなると、SAY(伝えること)だけでは不十分であると、わかっていただけると思います。もちろん、パーパスを掲げていることを知ってもらわないと始まらないので、発信する必要はあります。ただし、一方的に「私たちのパーパスはこちらです!よろしくお願いします!」と伝えても、むしろ押しつけがましく、効果的ではありません。

 私の理想は「DO(アクション)の答えとしてSAY(広告)」があること」です。「何でこのブランドってこんなことをやってるの?」と、生活者が興味を持ったときに、「それはですね…」と、志を説明するメッセージがある。これが、最もパーパスが伝わる場面だと思います。言いっぱなしの“寒い”コミュニケーションにならないために、SAYとDOは常に両輪であること、そして発信するタイミングが重要であることは、意識しておく必要があると思います。

先行者優位は消失し、眼差しはよりシビアになる

――これから日本でどのようにパーパス・ブランディングが浸透していくことを期待していますか?

 「機能価値で差別化してマーケティングをする」という考え方から、「独自の思想でブランドを育てていく」という考え方への転換は、天動説から地動説に変わったくらい大きな出来事だと思います。「競争して1位になる努力をする」から、「競争せずに選ばれる工夫をする」というふうにルールが変わった、と言うと伝わるでしょうか。

 しかし、パーパスがあるという目新しさで先行者優位を得られていたフェーズは、もう終わったように思います。あらゆるブランドがパーパスを装備していく時代になるこれからは、パーパスに対する社内外からの視線が一層シビアになるでしょう。掲げていないなんて論外、ということはもちろん、掲げただけで何もしていないなんてあり得ない、といった意見が増えていくかもしれません。

 そうなると、パーパスプレミアムの逆で、パーパスの在り方によって生活者の心が離れていく可能性も出てきます。難しいフェーズになってくると思いますが、だからこそパーパスを「発信しただけの自己満足で終わらせない」ことが大切です。

――最後に藤平さん自身の目標をお聞かせください。

 多くの人に愛され、憧れられる「ハイリスペクト&ハイラブ」な日本生まれのブランドを増やしたい。これが中長期的な目標です。

 短期的には、「デジタルやテクノロジーとパーパスの距離が遠すぎる問題」を何とかしたいですね。

 僕は、志があったほうがテクノロジーは便利に使えると思っています。何のためのテクノロジーか、どんな志をもとに活用したいのかを決めると、その後がスムーズですし、世の中に愛される確率も上がる。ここに対して、クリエイティブディレクターという立場からできることを模索していければと思っています。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/25 07:30 https://markezine.jp/article/detail/37782

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