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有園が訊く!

限界を迎える広告代理店ビジネス──業界タブーに切り込み「デジタルシフト事業」に挑むデジタルHDの狙い


日本全体のDX化は実現できるか?

有園:マインドセットといえば、野内さんが目指すDXやIXの推進に関しては、これはもう日本のビジネスパーソン全員のマインドセットが変わらなければ、変革は起こらないと思います。

 先ほど話した流通小売業界の取引のデジタル化ですが、大手SI企業やコンサルティング企業にいわせると「基幹システムにも影響が及ぶから、それを踏まえて5ヵ年計画を立て、要件定義から始める大規模プロジェクトを作らないといけない」となります。そんなスピード感ではなく、たとえば請求書のやり取りをデジタル化するとか、アジャイルで始めてもいいんですよね。それで基幹システムに影響が及んだら、そこから新たにデジタルで仕組みを構築すればいいですし、そもそも5年後にどういう状況になっているかもわからないわけですから。

野内:SI企業はとにかく規模を大きくして、取扱高を増やさないといけませんからね。どこかの業界と似ていますね(笑)。

有園:そうなんです。もう1つ、日本企業の多くは変化を嫌う傾向があります。また、開発案件を外部に丸投げし、社内で人材を育てないなど、課題はたくさんあります。日本のビジネスパーソンのマインドセットを変えないと変わらないでしょう。

野内:今のDXは、SIer中心に10兆円マーケットが動いていると思います。有園さんの話にあるように、開発者の意識も変わっていかないとなかなか難しいのは確かです。

社内マインドセットの改革を日本全体に展開

有園:話がやや逸れましたが、そこで改めて、IX=産業を変えるという取り組みにどのようにアプローチしているのか教えていただけますか。

野内:私は、出発点はデジタイゼーションやデジタライゼーションでいいと考えています。いきなり構造を変えるよりも、ソフトランディングで取り組みやすいですしね。

 私たちが最初に着手しているのは調剤薬局業界です。LINE上で処方箋のやり取りや問診が行える「つながる薬局」のサービスを提供しております。

 ユーザーがクリニックで出された処方箋を撮影し、LINEで調剤薬局に送ると、薬局側では薬の調剤が完了したらユーザーへ通知してくれるため、平均15分といわれる調剤薬局での待ち時間を0にすることができるというものです。これらのプロセスの中でデジタルデータが蓄積されていくと、コミュニケーションも円滑になりますし、新たなビジネスにつながるでしょう。今、導入店舗数も利用ユーザー数も右肩上がりなんですよ。

有園:医療機関を巻き込む構想はあるんですか?

野内:それも考えています。そもそも処方箋自体、データをわざわざ紙に出力していますから。こんな感じで、プロセスから入ってDX化の流れを作っていきたいと考えています。

有園:ありがとうございます。最後にマインドセットについてもう1度伺いたいのですが、先ほど「社内のマインドセットはかなり大きく変化した」という話がありましたが、具体的にどのように取り組んだのでしょうか。

野内:まずはパーパスの策定と発信です。しかし言葉だけではなかなかやっぱり実感がないので、先日新しい価値創造を象徴する社内イベント「New Value Forum」を開催しました。これまでは経営層が戦略を語るスタイルだったのですが、今年からは新しい価値創造にチャレンジした人を自薦他薦で募って、私達グループ役員がその内容を審査し、ファイナリストが当日プレゼンをするというピッチイベントにしたんです。

 社内文化形成のためのイベントだったのですが、今まで「新しい価値創造だ」とか「チャレンジだ」と言葉では言っていましたが、まさに百聞は一見に如かずというもので、全員でそのようなイベントを体験したことで、私たちが今まで発してきたメッセージへの解像度が高まり、浸透されていった感じです。登壇者のレベルも高く、150件以上、全社員の約10%の応募があったということを考えると、グループ内の各所でいろんなチャレンジが生まれていると実感しました。

有園:ここまでの話を受けて、先日の野内さんから聞いた話の中にあった「ユ―ザーエージェント」「ユ―ザーエージェンシー」という言葉が浮かびました。「広告媒体の取扱高に連動する取り分のビジネス」の限界という話も、新しい価値創造という話も、誰のために価値を創造するのか? というと、ユーザーのため、生活者のためにやるんですよね。

野内:そうですね。パーパスの策定や発信を通じて、社員のマインドセットを変えるところから当社自身を変革していき、「ユ―ザーエージェント」「ユ―ザーエージェンシー」として、広告業界や負を抱える数々の産業を変革していきたいと考えています。

有園:僕の経験上、経営層がきちんとした言葉で経営を語ると社員は本当に変わります。そこでデジタルホールディングスグループ約1,500人のマインドが変われば、それを日本全体に展開していくだけの話ですよね(笑)。つまり野内さんが日本を変えていくということです。そしていろんなところで変革が起こったら嬉しいですよね。今日はありがとうございました。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/04/06 18:45 https://markezine.jp/article/detail/38410

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