SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2022 Spring

1年数ヵ月で主要顧客のアプリ利用率8割以上 ベイシアがDXを成功させた7つのコツ

既存の考え方を変えることを恐れない

 3.の『デジタルの内製化チーム、デジタルマーケの専門家の採用』について、亀山氏は「スピード感には内製化が必要」だという。ベンダー企業はいろいろなサービスが提供できるが、1件ずつに見積りや希望仕様の説明、社内稟議が必要で、プロジェクト開始までに時間がかかる。

クリックで拡大します
クリックで拡大します

 「15人程度のエンジニアを内製化できれば、コミュニケーションロスが圧倒的に減ります。日本ではエンジニアの約7割がベンダー企業に属していますが、アメリカでは約7割がユーザー企業側に属しています。日本全体としてユーザー企業に圧倒的にエンジニア少ないのがデジタル敗戦の理由だと考えています」(亀山氏)

 ベイシアでは、デジタルマーケティングの強化に伴い本部立ち上げから2ヵ月後の12月には14名の中途採用を完了。プロジェクトマネジメントではなく、ソースコード書くエンジニアを社員採用することが非常に重要だという。

 4.の『新しい働き方、制度を設計』は、新しい優秀なメンバーを迎え入れるためにも必要だった。1つはオフィスについて。東京・表参道にオフィスを新設した。カインズのオフィスと共同で、グループメリットを生かしている。ベイシアの本社は群馬県にあるので、フルリモートも採用した。そして独自の人事制度として、給与体系の違うジョブ型採用とプロパー社員の“1国2制度”を実施。働く空間と場所の自由度を上げた。

 「最初にこの制度設計を作るのは苦労もありましたが、ある程度のリスクと先見性を持って行わないとメンバーも集まりません」という亀山氏。組織にはプロパー社員と専門家のハイブリットが必要と感じ、デジタルマーケティングの専門家の採用に踏み切り、初年度に20名を増員した。

 5.の『カインズ・ワークマンのベスト・プラクティスを活用』について、亀山氏は「進んだ事柄を素直に学ぶのは、どんなビジネスにおいても重要だと思っております」と語る。カインズ、ワークマンはそれぞれに優れたデジタルマーケティング領域での世界観や先進性を持つ。それぞれの先進リーダーと週次でミーティングをして学んでいるという。

 「独自感を持ってすべて進めるよりは、ベターなプラクティスを素直に取り入れてくこともスピードを上げるためは重要です」(亀山氏)

 6.の『プラットフォーマー・サービスのAPI活用』において、亀山氏は「今や、SaaSサービス的なものの考え方、すなわち“作るより使う”時代に入ってきたのは明白です」という。たとえばネットスーパーにおいても楽天と協業したことで、ベストなUIサービスレベルを提供できている。

クリックで拡大します
クリックで拡大します

 「自前で制作していたら、一般的な機能ですら欠落している上に大変な労力がかかったでしょう。後発であるがゆえに、”作るよりも使う”領域を明確にし、自分たちのリソースは、差別化をしたい領域に徹底的に充てるという戦略的な意味もありました」(亀山氏)

 さらに今後は、小売のDX支援に特化したベンチャー企業のD&Sソリューションズとともにデジタルチラシ制作も視野に入れている。「様々な観点で検索やソートができ、欲しいものをすぐに見つけて買える、チラシ機能をアプリに導入します。コラボ案は出ていますので、パートナー企業と連携しながら、お客様満足を高めるデジタルをさらに作っていきたいですね」(亀山氏)

良いシステムは良いコミュニケーションから

 7.の『良い文化を作る。』ことについて、亀山氏は「組織間のコミュニケーション量が、システムアーキテクチャーに多大なる影響を与えます。すなわち良いコミュニケーションが取れていないと良いシステムは作れない。良いシステムが作れないと、組織は疲弊していきます」と語った。

 ベイシアの文化としてベイシアデジタルVALUEを設定。まず「For the customers」「より良いものをより安く」はベイシア全体で目指していることである。それを組織・技術・文化の3つの面で目指していく。組織としては、ビジネス成果にコミットするデジタルプロ集団であること。技術面では、開発において先進技術とオープンソースを使いながら、常に進化する最高のアーキテクチャーを作ること。文化としてはHRT(Humility:謙虚、Respect:尊敬、Trust:信頼)を醸成する。

クリックで拡大します
クリックで拡大します

 行動においては、「最後の印象」を大切にした。「ミーティングの際も、リーダーは終了時に何を発するのかを気をつけるようにしました」「人を起点として多様性を認めながら相手の立場になることを意識して行動することです」と亀山氏は語る。

人として尊重し、敬意を払い、感謝し、常に誠実に対応することを大切にしています。まだまだ実現できていない部分も多いですが」(亀山氏)

 そして仲間との信頼関係を築くには、「すべての仕事は等しく重要」だとリーダーが体現することだという。地味でも重要な仕事はある。目立つ社員だけでなく、そんなところに光を当てることから信頼関係は生まれる。部下に安心感や心理的安全性を与えるためにもリーダーは心の余裕を持ち、笑顔でいること。上司の行動が組織の文化を作るからだ。

 「サステナブルにスピード感を持ってみんなが働くには、気持ちの安定性が保てる文化が非常に重要です」と亀山氏は述べた。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
MarkeZine Day 2022 Spring連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/04/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/38834

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング