日本全国47都道府県で約1,000物件・10万室の賃貸物件を管理運営するビレッジハウス
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、これまでのご経歴、現職における業務やミッションについてお教えください。
レドマン:私は13年前に来日し、広告代理店でメディアプランニングに携わっていました。4年前にビレッジハウス・マネジメントに入社。その後シニアマーケティングマネージャーを経て、現在は本部長職に就いています。
レドマン:現職でのミッションは、当社が管理運営する低価格賃貸住宅「ビレッジハウス」の新規入居者獲得のための効果的なマーケティング戦略の立案と実行です。現在我々が管理運営する物件は約1,000物件、部屋数としては10万室以上あります。平均家賃は1室あたり約37,000円で、ターゲットは日本人の他、日本在住の外国人です。
原島:私は元々複数の外資系ソフトウェアベンダーに10年以上在籍しており、その後海外のマーケティング代理店で5年弱、日本市場開発の責任者を務めておりました。Delacon Japanに入社したのは4年程前で、現在はコールトラッキングの普及と活用促進をミッションとして、市場開拓などを行っています。
原島:コールトラッキング自体は、10年以上前から日本の市場に存在するサービスです。Delaconコールトラッキング独自の特長としては、オンライン/Webサイト経由でのお問い合わせから、より多くの情報を取得できる強みがあります。
タップ計測と実際の入電数には大きな誤差がある
MZ:社会的にデジタルシフトが加速していますが、商品・サービスによっては電話でのお問い合わせ、コンバージョンが重要なビジネスも多く存在しています。貴社も不動産を取り扱う上で電話でのコミュニケーションが多いかと思いますが、マーケティングにおける課題をどのように見ているでしょうか?
レドマン:元々電話についての計測は、サイトに設置したピクセルタグを利用しておりました。サイト上から電話番号がタップされた回数を計測し、Googleアナリティクスに連携させたり、キャンペーンマネージャー360に取り込んだりする方法です。
ピクセルタグによる計測の場合、我々がわかるのはタップされた回数のみです。計測データには誤タップも含まれますし、タップの後お客様が実際に会話されたのか、内見まで至った割合はどのくらいかなど、タップの質や成約確度までは測れない点が課題としてありました。
この問題を解消し、広告の効果について正確に計測したいと考えたのが、Delacon導入の背景です。一人のお客様が広告を見て電話をかけ、内見を経て成約に至るまでの正確なコストを算出することが目的でした。
MZ:Delaconの提供するコールトラッキング・ソリューションについての概要をお教えください。
原島:基本的な仕組みは、計測したいWebサイトに弊社のタグを設置していただき、そこから得られる情報を当社で計測する方法です。
Webサイトにタグを埋め込むことで、元々表示されている電話番号が、弊社の計測用番号に切り替わります。ユーザーがこの番号に電話することで、使用されているデバイスやブラウザ情報、流入元、ランディングページのURL、キーワードなどのオンラインデータの取得が可能です。
原島:セッション中に取得した情報は、Googleアナリティクスやキャンペーンマネージャー360、Google広告、Yahoo!広告、Salesforceなどと標準連携できる他、Webhook及びバッチダウンロードのAPIも用意されています。
先ほどレドマンさんがおっしゃった通り、単純なタップ数と実際の入電数には大きな乖離があります。ディスプレイ広告を多用されるクライアント様の場合、特にその傾向が強く、実際に当社が携わった事例では、入電数がタップ数の4分の1~5分の1程度だったこともありました。
入電に含まれる多様な情報をSalesforce内に集約
MZ:貴社では、Delaconのコールトラッキング・ソリューションをどのように活用されているのでしょうか?
レドマン:コールトラッキングによって得られた正確なデータを、広告管理のプラットフォームであるキャンペーンマネージャー360に学習させることで、広告を自動的に最適化させています。
具体的な話をしますと、当社ではフリーダイヤルの電話番号を150番号用意しており、それらをローテーションさせながら、お客様ごとの個別のセッションに表示させています。下層ページや個別の物件ページから電話をした場合でも、どのページからの入電だったか把握することが可能です。
また、お客様がサイトに訪問した場合、URL上に様々な情報を含むUTMパラメータを付与します。含まれる情報は、キャンペーンの内容やクリエィティブの種類、ターゲット層やキーワード、言語などです。電話をした場合もこれらの情報をすべて把握しています。
毎朝、DelaconのAPIや、コールセンターのシステムから抽出されたデータがSalesforce内に入力され、コールケースとして電話データが溜まっていく仕組みです。
レドマン:1回の電話につき1つのケースが作成されますが、このケースには、申込情報、内覧予約、内覧実施、申込の承認、そして実際に入居に至ったかなどの情報が含まれ、ファネルごとの経緯や結果がすべて見えるようになっています。
これらのデータを活用することで、たとえばFacebook広告のコンバージョンが高ければ他媒体からFacebook広告へ予算を移行したり、より品質の良い入電が得られたクリエィティブへシフトさせたり、逆に問い合わせが多いが成約に至らないキーワードを除外したりといった、広告運用の判断が可能となりました。
導入で新規入居者獲得コストは30.6%減、ピーク時の新規入居者は34.4%増
MZ:Delacon導入によって得られた成果について、具体的に教えていただけますか。
レドマン:お客様が入居に至るまでにかかった一人あたりの広告費用について、Delacon導入直後の2020年12月と2021年12月を比較したところ、約30.6%のコスト削減効果が得られました。
その翌年の2022年の1月~3月には、さらに新規入居者の獲得コストを5.6%削減しています。1月~3月は引っ越しのピークシーズンです。オンライン広告の予算を26.9%増額しているにも関わらず、顧客の初期問い合わせの獲得に必要なコストはほとんど変わっていません。結果として、新規入居者数34.4%増を達成することができました。
業務効率の面でも効果が得られています。コールトラッキング導入によって、Eメール、チャット、メッセンジャーなどの各種コミュニケーションチャネル同様、電話というチャネルもデジタルとして一気通貫で分析できるようになりました。各チャネルを横断的に見ることで、利用するメディアの比率を無駄なく調整できていると思います。
MZ:コールトラッキングを導入されるにあたり、Delaconを選ばれた理由についてお教えください。また、導入時、Delacon側からはどのようなサポートを受けたのでしょうか。
レドマン:導入にあたり、何社かを比較検討しましたが、Delacon導入の決め手は、ビレッジハウスのコールセンターシステムやSalesforceとの連携がスムーズにでき、必要な情報が取得できたことです。
基本的にはJavaScriptをサイトに設置するだけだったため、設定自体もあまり難しくありませんでした。GAの目標設定やキャンペーンマネージャー360との連携、API接続などに関しては、Delacon側から直接サポートを受けています。
電話による新規顧客獲得に最適なソリューション
MZ:ビレッジハウス様における活用事例も踏まえ、不動産業界以外でも有効な機能や活用方法など、コールトラッキング・ソリューションの可能性についてお教えください。
原島:電話での問い合わせが、新規顧客獲得において重要なチャネルである企業様であれば、どの業界でもご活用いただけると考えています。
原島:ビレッジハウス様のような不動産業界はもちろん、自動車ディーラー様などでも導入いただくケースは多いです。
日本では高齢化が進んでいることもあり、最近ではお葬式やお墓関連などのライフエンディング業界のクライアント様からのご依頼も増えています。
他には、水漏れ修理や開錠など、緊急系サービス業者様なども電話の多い業界ですよね。意外な業界としては、法律事務所や司法書士の方からのご相談もあります。
逆に、ファッション業界やECの場合は少し難しいかもしれません。商品の単価的にコールセンターを設けるような企業様は少ないでしょうし、電話番号自体を載せないWebサイトがほとんどです。また、電話番号をカスタマーサポートやアフターセールス目的でご利用されている場合、弊社のツールを入れてもあまり効果がないと思います。
Webサイト上の目立つ箇所に、新規顧客獲得を目的とした電話番号を設置されている企業様であれば、BtoB、BtoCを問わずお役に立てるのではないでしょうか。
また、ビレッジハウス様の事例では、様々なデータによって複雑な分析をされているような印象を受けるかもしれませんが、もっとシンプルな活用をされているクライアント様も多くいらっしゃいます。
広告からの電話のうち、数十秒以上つながった電話のみをコンバージョンとし、その結果をGoogle広告やYahoo!広告に自動反映させ、学習させるといった単純な活用も非常に効果的です。
さらなる最適化、追加機能の開発へ
MZ:今後、オンライン広告領域において実現したい取り組みや展望などがあればお教えください。
レドマン:現時点で、当初考えていた計測や各種ツールとの連携はすべて行えており、ファネルも理解できています。今後取り組むとすれば、これらをどのように最適化していくか、という部分です。
レドマン:たとえば、新しい媒体に出稿する際にはその媒体を使ってみて、実際のパフォーマンスにどう影響するか。後は、ABテストなどを行って最適化を進め、よりパフォーマンスを高めていくことを考えています。
原島:既に十分にご活用いただいておりますので、今後の弊社の取り組みとしては、安定的にサービスを提供し続けるという部分だと思います。また、今後新しい機能などが追加されたら、都度ご案内はさせていただきたいです。
たとえば、海外では実装済みの通話文字起こし機能などは、まだ日本では提供しておりません。私も実際にテストに立ち会いましたが、日本語は英語と比べて難しいため、現時点ではまだ提供できる品質に至っていないのが現状です。
文字起こし機能が実装されれば、活用方法を交えてご提案させていただきたいですし、もしビレッジハウスさん側から「このような機能が欲しい」といったご要望をいただければ、積極的に検討して実装化したいと考えております。