消費行動にまつわる発見〜衝動買いは衝動か?
「Z世代」は『衝動買い』をしないと耳にする機会も多い。そのため、やや実験的にインタビューの一部ではZ世代に33,000円、α世代に11,000円を進呈し、特別ボーナスを手にした状態で実際に買い物を行ってもらい、その消費行動を深掘りしていく形式で実施した。しかし実際に彼らから出てきたのは「普通に『衝動買い』することもありますよ」との発言だった。ただ、よくよく話を聞いてみるとこれも「ミレニアル世代」以上が考える『衝動買い』とは意味合いが違うことが明らかになった。
彼らはSNSのおすすめ画面を通じて『偶然』の情報接触を行っているが、すぐに購入に至ることは少ない。さらに購入までのプロセスを深掘りしていくと、『偶然』の情報接触を重ねることで購買意欲が高まり、一定のラインを超えると実際の購入に向けた比較検討のための行動に移るという流れになっていた。そんな彼らの『衝動買い』とは『偶然』の情報接触の回数が少ない、もしくは期間が短いことに加え、比較検討の行動に移る前に購入してしまったときのことを示していた。たとえば「まだ細かく調べる前なのに、友達と一緒に買い物に行ったときに買ってしまった」などの発言もあった(図表2)。

この行動の背景には「失敗したくない」という意識が見え隠れする。SNSのみならずインターネットが普及し劇的な情報量の拡大を体験してきた彼らは、良いことばかりが書かれている情報は基本信用しない。さらに自分が直感した、買いたい気持ちや興味も簡単には信用しない。そのため、SNSのおすすめ画面を中心に複数回の接触を通じ、情報の精査と自分の気持ちの確認を重ねることで失敗を回避しているのである。そのため失敗回避の確率が下がる『偶然』の情報接触の回数が少ないうちに購入してしまうことは、彼らにとっては『衝動買い』と表現される行動なのである。
「ミレニアル世代」以上にとっての『衝動買い』とは店頭での一目ぼれなど、買う予定がなかったのに“初めて”見つけた商品に惹かれ、購入してしまうことだが、「Z世代」にとっては“初めて”ではなくとも、接触回数が“少ない”商品を購入してしまうことを『衝動買い』と呼んでいるのである。