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MarkeZine Day 2025 Retail

ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点

これからのマーケターに必要な「社会編集力」とは?成功事例から学ぶ、DE&Iへの向き合い方【前編】

徹底的なリサーチから、眠っているニーズを探り当てる

白石:先ほど、社会構造的にマジョリティの中にいると、自分がマジョリティだとは意識しないという話がありました。一方、DE&Iという言葉にバイアスがかかりすぎていて、一人一人が自分の内面の部分にある、自身のマイノリティな要素を見つめる機会は少ないですよね。けれども、個人的には誰しもがマイノリティの要素を持ち合わせていると考えています。

 「ゆるスポーツ」は澤田さん自身のスポーツマイノリティ視点が起点になっていますが、視点を変えるとスポーツってこんなに新しいものになるんだと、どの種目も驚くばかりなんですよね。たとえば「500歩サッカー」は、どういう種目なんですか?

澤田:500歩しか歩けないルールで、独自に開発した「500歩サッカーデバイス」が残り歩数をカウントします。そうすると、足が速かったりスタミナがあったりする人もむやみに走れないし、残り歩数が0歩になった時点で退場になるので、減ってきたら休まないといけない。休んで4秒目から、1秒ごとに1歩ずつ回復していきます。つまり、こまめに休憩するのがポイントになります。

500歩サッカー
世界ゆるスポーツ協会とミズノが共同で開発した新競技「500歩サッカー」

白石:“休まないといけない”んですね。

澤田:そう、普通のスポーツと逆ですよね。これは心疾患のある友人と、激しく動けなくてもできるスポーツを考えよう、とスタートしました。

 最初にやったのは、やはり徹底したリサーチです。心臓や病気のこと、それによって友人がどういう人生を歩んできて、何がしたいのか。また、スポーツ側の構造的な課題も探りました。「そもそも休憩を取ってはいけない」という負の構造に気づいて、それは人を排除するよな、と。そこから、コンセプトやルールを練っていきました。

課題の本質を捉えながら、ユーモアのある解決方法を提示する秘訣

澤田:自分のニーズを、本人もわからない場合があるんですね。たとえば長年スポーツを制限していると、できなくて当たり前、できないのは自分のせい、のような無意識の思い込みができてしまう。それを丁寧に対話して取り払い、これまで話せていなかった言葉が出てくる道を作る、という感じです。

 そうして何度も話をすると、本人から「考えてみれば休憩をとってはいけないのがおかしいかも」といった声がようやく聞ける。自分ではなく、スポーツ側に問題があるのだと。

白石:なるほど。他の種目もそうですが、「500歩サッカー」の名称がそもそもおもしろいし、ルールにもクスッと笑ってしまう。澤田さんは課題の本質を捉えながら、ユーモアのある解決方法や接点となる言葉を提示するのが本当に上手だと思います。どんなことを意識されているんですか?

澤田:そこは、ある種マーケターとしての戦略です。歩数が減っていく「500歩サッカーデバイス」というハードウェアも、すごいんだかすごくないんだか、ちょっと妙ですよね(笑)。

 でも、あくまでユーモアは開発プロセスの後半3割で盛り込んでいく。前半7割は100%、まじめです。つかめたと思うまでは、バイアスをできるだけ外して、当事者の方が一人の人として社会でどんな不都合を被ってきたのか、僕なりに全身全霊で耳を傾けていきます。

 リサーチ不足、勉強不足なのに中途半端にエンターテインメントをかぶせると、ふざけていると受け止められて、ネガティブな反応が強く出ます。だから僕は、徹底的なリサーチと勉強をしたという土台が自分の中にないと、ユーモアを繰り出せないです。

【後編】は10月20日(木)に公開予定です。

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この記事の著者

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント
株式会社Amplify Asia 代表取締役
株式会社YUIDEA 社外CMO

WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。2024年10月より、YUIDEAの社外CM...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/18 09:00 https://markezine.jp/article/detail/39987

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