※本記事は、2022年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』81号に掲載したものです。
通販を極めた結果“仕組みで売る”状態に
——はじめに、西野さんが商品企画部長に就任されるまでのことを教えてください。元々新卒で御社に入社されたそうですね。
はい、今年でちょうど21年になりますね。大学時代は応用化学を専攻していたのですが、実験の待ち時間にドラッグストアに走って新作をチェックするくらい化粧品は大好きでした。どうしても化粧品の商品企画がしたくて、新卒からそれができる会社を調べ、当時は今ほど認知度がなかったオルビスに入りました。今でいうスタートアップのような感じで、何でも挑戦させてくれそうな雰囲気がありましたね。
希望通り、1年目から商品企画に携わり、2014年には同年発売の基幹商品『オルビスユー』の初代ブランドマネジャーを務めました。以降、原価管理や新規獲得の責任者も経験しながら2018年に商品企画部長となり、昨年からは新規事業領域、そして今年からはサステナビリティ領域も管掌しています。
——商品企画開発に並々ならぬ思いを持たれていたのですね。では、オルビスブランド全体のリブランディングについてうかがいます。元々、どのような課題があったのでしょうか?
創業時からあった、自分たちの提供価値やお客様とのつながりが、オペレーショナルでキャンペーンドリブンなマーケティングを追求するがゆえに、薄れつつあったこと。また、30〜40代のお客様が次第に“卒業”され、ブランドとしての勢いも頭打ちになっていたこと。大きくこの2つの課題がありました。
1つ目については、元々通販事業でダイレクトにお客様に向き合ってきたからこそ、顧客行動のデータは膨大に有していたんですね。そのデータを基に、毎月カタログに商品を数多く並べて、その中からたくさん買っていただけるようにキャンペーンを実施したり、感謝券をお配りしたりしていった結果、仕事の仕方が次第にオペレーショナルになっていたのです。毎月カタログを制作・発行しているので、どうしても思考が短期的になり、また既存のお客様を大事にするあまり視点が内向きにもなっていました。市場でのポジションや、5年後10年後の未来を語る機会はほとんどなく、ただ、必死に目の前の業務に追われていた状況がありました。
2つ目については、ファッションビル業態の商業施設を中心とした出店や、10代後半から20代向けの女性誌への広告出稿も増やして顧客の新規獲得を続けていった結果、10〜20代の女性向けのブランドというイメージが大きくなってしまったことも背景にあります。元々、肌本来の機能を生かすために不要な油分を排除した「オイルカット」が私たちの商品の特徴だったこともあり、クリーンで安全安心な印象はあるけれど、30代以上の方には機能が物足りないように映ってしまっていたのです。
——2018年にリブランディングをスタートした当時のことをうかがえますか。
前述のような状況に対して、私を含めて社内も「何かを変えていかなければいけない」と意識する以前に、ただひたすら日々の仕事に追われ必死で取り組んでいました。そこへ当時代表になった小林が、「頻発するキャンペーンや価格訴求でお客様とつながるのではなく、創業以来、大事にしてきた提供価値があるはずだ」と指摘したんです。
そこで、元々お客様それぞれの肌をどうきれいにしていくかを考えてきた原点に立ち返り、スキンケアを中心としたビューティーのブランドとして「ブランドビジネスをしていく」という考えの下、全社的なリブランディングに踏み切りました。私は商品企画部長として、ブランドを体現する『オルビスユー』シリーズを中心に据え、商品を展開する計画とともに社内の意識統一を担いました。