回り出した大丸京都店のPDCA
2021年下期に導入した大丸京都店では、30代~40代の女性に向けてInstagramで情報を発信している。ソーシャルインサイトを活用する前はエンゲージメント率2.9%、フォロワー7,468人だった。導入後分析・改善を行った結果、2022年7月末時点でエンゲージメント率は4.6%、フォロワーは1万873人と数値を伸ばすことができている。
同店でWebやSNS運用、販促を担当する荻野隼太氏は、かつての課題を次のように語る。
「私たちの課題は大きく2つありました。まず投稿をしてもフォロワー数が増えないこと。そのため、どのような投稿をすればいいかわからなくなっていたことです」(荻野氏)
そこで、まずはユーザーが何を求めているのかを把握するために、ソーシャルインサイトのレポート抽出機能で分析することにした。これまでの投稿のいいね数やエンゲージメント率から、人気のあった投稿を割り出したところ、文章や写真の違いはあれど、スイーツ情報を扱う内容であることがわかった。また、「雑貨」「大丸京都店でしかないイベント」への反応もいいことが判明。投稿内容はこれら3種に注力することにした。
あわせて、投稿キャプションの統一や、投稿する時間帯の変更・固定、投稿画像の改善を実施。さらに、月次で前月投稿データを抽出、数値を分析して仮説をチームで共有し、次の投稿作成に生かす振り返りの実行が定着した。
「これまでは、とにかく新規の投稿を増やすことに注力していましたが、テーマを絞りPDCAを繰り返すことでエンゲージメント率が向上し、フォロワー増につながりました」(荻野氏)
大丸京都店は、約半年の取り組みで、いいね250%アップ、フォロワー数125%アップを実現した。このスコアは通常投稿だけでなく、フォロワー増をブーストするためのキャンペーンによって達成している。
たとえば、2月22日の「ねこの日」にあわせて、大丸京都店公式アカウントをフォロー後に、ハッシュタグ「#べすとにゃいんだいまるきょうと」をつけて自慢の猫を投稿してもらい、その中から「べすとにゃいん」9匹を選ぶキャンペーンを実施。第2弾では、この「べすとにゃいん」の中から「推しにゃん」にいいね投票して順位を決める「推しにゃん総選挙」を行った。すると、期間中のフォロワーの伸び率は対前年で145%増となった。
「投稿や投票のキャンペーンではデータ抽出が面倒になりがちですが、ソーシャルインサイトのデータ抽出機能を活用することで、いいねの投票投稿や告知投稿などの分析も簡単に行えました」(荻野氏)
また、荻野氏は一連のキャンペーンを通し、いいねで投票するだけという「参加のしやすい設計」と、猫のように「みんなが好きなものを扱うこと」が成功のポイントだと考え、他のカテゴリーでも試すことにした。
その1つがホワイトデーのキャンペーンだ。ホワイトデーおすすめのスイーツを9つ投稿し、いいねで投票をしてもらった。そして、フォローをしてくれたユーザーの中から抽選でスイーツをプレゼントする仕組みにした。
結果、フォロワーは224名増加し、エンゲージメント率も6.13%と過去一番の成果となった。さらに、店舗販売と連動していたため「インスタを見て来店した」という声もあり、来店促進の効果が確認できた。
目的とKPIをいかに可視化するか
大丸京都店の成果を受け、西本氏は「Instagramが集客や売上につながらない、フォロワーやいいねが増えないといった問題を抱えているケースでは、目的とKPIが見える化されていないかもしれません」と語り、同社が導入した可視化のモニターシートを紹介する。
まずターゲットと目的を明確にし、KGIや競合運用を可視化、さらに月次で目標とKPIを追っていく。
「言うは易しで、実際に記入するとなると難しいです。しかし、月次のフォロワー数やエンゲージメント率の割り出しはソーシャルインサイトを使えば簡単です」(西本氏)
コミュニケーションの場であるソーシャルメディアでは、数式のような明確な答えがあるわけではない。各社がそれぞれの目的を決め、それに沿ったKPIをセットし、日々運用を続けることで知見を蓄積する必要がある。知見の蓄積には、運用の結果を可視化し、何が良くて何が悪いのかを分析し、改善をしていく必要がある。
ソーシャルメディア運用で成果を出す上で、データを分析すること、それを容易にするツールの活用がいかに重要であるかを示唆するセッションとなった。
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