ABCマートが進める「メディアコマースサイト」化
森氏は本講演の主題である「マーケティングプラットフォームの最適化」を企業が目指す上で「ユーザーとのコンテンツの“共創”さらには集客したユーザーの“ファン化”を促すことが重要」と語る。また、商品理解から購買までを商品詳細ページで完結させる体験設計が企業側に求められることも改めて指摘。「この二つのポイントを押さえるには、自社のECサイトをメディアコマースサイトにしていく必要がある」と提案する。
メディアコマースサイトとは、コンテンツが読める「メディア」と「ECサイト」が一つになったサイトのことを指すそうだ。ユーザーはECサイトだけでなく、コーポレートサイトやブランドサイトなどにもランディングする点を踏まえ「これら複数のサイトに、ユーザーがシングルサインオン(※)で回遊できるようになれば、企業はユーザーとのコンテンツの“共創”と“ファン化”を達成しやすくなる」と森氏。つまり、ECサイトをメディアコマースサイト化するには、各ブランドサイトとECサイトをシステムとコンテンツの両面から連携させる必要があるというわけだ。
※ユーザーが各種サイトのうちのどこかで一度ログインすれば、ログイン状態のまま他のサイトにも遷移できること
メディアコマースサイトの例として、森氏はABCマートの事例を紹介する。同社のECサイトでは、たとえば「ローカットスニーカー」と検索したユーザーに対し、検索結果として該当商品を表示するのみならず、ローカットスニーカーについて解説した記事コンテンツも表示。まさにメディアコマースサイトを体現したつくりとなっている。
運用負荷軽減を実現したシチズン時計の事例
森氏はメディアコマースサイト化の事例として、シチズン時計のサイトも紹介する。シチズン時計では、各ブランドを一覧で紹介したオフィシャルサイトとECサイトを統合。オフィシャルサイトのトップページに新商品や売れ筋商品を複数のバナーで表示する仕様へと変更した。
バナーはCMSプラットフォーム「サイトミライズ」を使って掲出し、ノーコードで画像の差し替えや更新を行っているという。画像の差し替えを行う場合、本来なら制作会社に委託して一からサイトをコーディングし直す必要がある。しかしサイトミライズを導入したことでECサイトをヘッドレスコマース(※)化し、運用負荷を軽減したのだ。
※ECサイトのフロントエンドとバックエンドを切り離し、独立させた形のシステムアーキテクチャ
また、シチズン時計のブランドの一つ「wicca」においても、ECサイトの商品紹介ページなど、静的ページはすべてサイトミライズを使って構築。より柔軟なデザイン更新やコンテンツ制作が可能な環境を整えたそうだ。「担当者の負担軽減とPDCAの高速化、いずれも実現するマーケティングプラットフォームこそが次世代のECサイト」と森氏は語る。
ecbeingではシステムの提供のみならず、専門人材によるマーケティング支援も積極的に行っているという。
「システムを通じて業務効率を高めた上で、マーケティング戦略の策定など、人を介在させた方が良い分野では専門人材をアサインします。ecbeingは、システムと人を掛け合わせてクライアントの売上の最大化を目指します」(森氏)