正しいインサイトを発見できているか
この逆説的アプローチでインサイトを深掘りしていく際、気を付けるべきポイントもある。阿佐見氏は「最初の『みんなこう思い込んでいるという常識』を捉える際に失敗しやすい」と指摘する。現状認識を誤ると、その後すべて間違えてしまうためだ(図表7)。

阿佐見氏は、「メディアで言われている論調をそのまま世の中の常識にしてしまいがちですが、そうとは限らない。一旦書いてみて、『こう言われているけど本当かな?』と上(常識)と下(本当はこう)を3回くらい行ったり来たりして、現状分析は非常に精緻にする必要があります」と説明した(図表7)。
最後に阿佐見氏は正しいインサイトを発見できているか確かめるためのチェックリストを紹介した。
こうして正しいインサイトを発見した後は、カスタマージャーニーマップを描いて適切な施策へと落とし込んでいく。時間の関係で本セミナーではそのやり方は割愛されたが、気になる方は書籍を参考にするとよいだろう。
インサイト発見のチェックリスト
- ターゲットの気持ちを起点に考えられているか?(作り手目線のインサイトになっていないか?)
- 気づきや発見があるインサイトか?(「本当はこうなのでは?」の内容が、「みんなこう思い込んでいる」の現状把握の部分に書かれても良さそうな内容になっていないか)
- 現状→ゴールへの変化を起こす「戦略」に落とし込めるか?
- (市場・顧客の分析だけでなく)競合分析・自社の強み分析をした上で、自社や自社の商品が着目するべきインサイトを見つけられているか?
最後に阿佐見氏は、マーケティングに携わる参加者に以下のようなメッセージを贈り、セミナーを締めた。「私が広告会社で働くようになってから10年以上経ち、数え切れないほどの素敵な商品やサービスを担当してきました。『なんでこんなに素晴らしい商品が広がってないのだろう』『こんなに素晴らしい技術を持っているのに、なんでそれが伝わる商品がないのだろう』と思ったことも数え切れないほどありました。
モノも情報も溢れている現在は本当に情報戦だと思います。調べる段階でつまずいてしまうと、商品を売るための適切な戦略を描くことができません。だからこそ、『正しいターゲットとセールスポイントにいち早くたどり着く調べ方』を使えるようになっていただけたらと思っています。本日お伝えしたことをぜひ実務に活かして、皆さんの担当されている商品が、必要とされている方にもっと届いていくことを心から願っています」
▼ターゲットの設定・精緻化について解説したレポート前編も、合わせてご覧ください。
電通マーケ部門の新人が必ず教わる「ヒットを生み出すリサーチ術」(1)正しい「ターゲット」設定の仕方