施策の肝となる「マジックナンバー」の探索と使い道
池田氏は「ユナイテッドアローズのキードライバーは『F2転換』です」と説明する。年に1回しか購入しない顧客に対して2回買ってもらうようにすることだ。現在はF1(年1回購入)留まり会員のうち、8割は翌年利用がない。またF2であっても、その6割が翌年の利用がないという。
同社ではF2転換率を上げる施策を強化している。具体的には、まずF2転換の顧客とF1留まり顧客の差異を可視化し、F2転換している顧客の購買特徴を洗い出す。購入商品の比較をはじめ、どのチャネルから購入したのかといった購買行動、顧客属性や顧客行動、店舗での購買状況などを詳らかにする。

そのうえでF2に昇華できるような「マジックナンバー」を発見し、施策に活かす。たとえば、特定の購買状況から一定期間内にF2に転換するには接触および来店が○回あったのかといった数字だ。転換に必要なマジックナンバーに近づけるため、現在はセグメントに応じてメールのオファーやクーポンの発行などを実施しているという。
顧客の声を「短いスパンで収集」して改善のスピードと精度を向上
加えて同社が現在注力しているのは、アンケートだ。顧客体験の満足度調査として従来でも年に2回実施してきたNPS(Net Promoter Score)の取得とは別に、短いスパンで顧客の声を収集し、すぐに改善施策に取り入れられるようなアンケートを実施している。
具体的にはマーケティングオートメーションツール経由で送付した「フォローメール」の中に、購買体験に関するアンケートを入れる。池田氏によると、接客満足度が高いと自由回答でも詳細に回答してくれる顧客が多いという。
今後はこうしたデータを蓄積・分析し、次の施策に活かすようにする。たとえば、購買データと満足度評価に何らかの関連性があれば、その示唆を出すことで満足度向上が期待できる。さらに、売上と満足度の評価の相関性を店舗やスタッフレベルでも抽出。特定のスタッフが非常に売上に貢献している場合は、フィードバックしてモチベーションアップにつなげてもらったり、さらなる接客改善に活かしたりといった施策も考えられるからだ。

最後に池田氏は、「ユナイテッドアローズのCRMとは、顧客満足度を上げる覚悟と努力だと考えています。これが実現できるように施策を回し続けることが大切です」と語り、講演を締めくくった。
