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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

「ブランドジャーナリズム」の実践を通じてマーケティングを加速する

読者の目線に対して誠実であること

——企業がブランドジャーナリズムを実践するには、どのような姿勢が大事になりますか?

 最も重要なのは、読者ファーストの姿勢です。ジャーナリストは常に読者目線なので、読者を顧客や生活者に置き換えて、その人たちから見たときに信頼性があるかを考えていきます。嘘をつかずに、正しく伝えること。また、誇張せず等身大であること、フラットで偏りがないこと、などですね。つまり、中立的で、読者に対して誠実であることが大事です。

 たとえば新聞広告や社内報でもトップインタビューを掲載する場合、もし自社に直近で不都合なことや不祥事が起きていたら、その件を書かないことはジャーナリズムの世界ではあり得ません。受け手の大きな関心事項だからです。私が記者時代にそんな原稿を提出したら、デスクに即座に却下されたはずです。今は、もはやSNSでの“発信”に長けた生活者のほうが、厳しい目を持っているかもしれません。

——では、具体的にデジタル時代における企業の発信には、どんな要件が必要でしょうか?

 先ほどの姿勢を踏まえて、企業がブランドジャーナリズムを実践する際に必要な要件や意識をまとめてみました。私が考案したというよりは、どれもメディア業界の先輩方から学んだことです。

 デジタルの時代に必要とされるスキルは多々ありますが、物事に向き合う姿勢や素養があれば、それらは必要に応じて学んでいけばいいでしょう。こうして挙げてみると、すべてのビジネスパーソンに必要なことにも感じますね。

これからの企業発信の5つのスタンス

1.時代を読むこと

 たとえば来月に出す雑誌なら、そのころの社会の空気を予測して、どんな特集で巻頭は誰に聞くかなどを考えていく。企業の発信にも、数歩先を読む力が求められる。

2.新たな現象に名前を付けること

 大きく言うと“編集力”。たとえば朝日新聞が命名した「ロストジェネレーション」がその後広く使われているように、メディアには時代を読んだ上で的確に名付け、社会に訴える力がある。日頃から意識していれば、企業もそうしたことができるはず。

3.常に「なぜ」を考えて発信すること

 “なんとなく”いい、といった感覚的な伝え方は、ジャーナリズムの世界では通用しない。なぜいいのか、おもしろいのかをファクトで積み重ねて表現するトレーニングは、企業の発信にも役立つ。

4.“冷静と情熱のあいだ”

 取材では情熱を持ってのめり込んでも、表現する際は冷静さや客観性がないと伝わらない。特に自社についての発信では、気を付けたい点。

5.神は細部に宿る

 自分の感触や感動ではなく、ファクトで伝えた上で、ストーリーを構築する。インタビューであれば人柄や言外の思いや雰囲気まで伝わるように工夫する。コンテンツの隅々まで手を抜かず、こだわろうとする意識が大事。

経営マターの活動で言行一致を目指す

——まさに、そうですね。特に新しい価値をつくって送り出すマーケターには、どれもそのまま大事なことだと思います。直近では、林さんのブランドジャーナリズム社でサポートされた事例として、野村グループの新聞30段の企業広告がありました。

 インフレの局面で「今こそ、野村は、動きます。」と、自分たちの姿勢を宣言されました。この件でとても興味深かったのは、一般向けの新聞広告という形を取りながら、最終的には我々がご提案させていただいた中から、外部よりも社員に伝えたいメッセージが選ばれたことでした。「エクスターナルtoインターナル」と言って、今インターナルコミュニケーション(社内広報)の領域でも注目されている考え方です。同じクリエイティブで、Webサイトのビジュアルやリリースのバナー、全国の支店のポスターまで刷新しました。

——そこまで多岐にわたると、社員レベルでは担当できないですよね。全社的な動きにするポイントはありますか?

 やはりトップの関与は必要です。野村さんの場合も経営マターとして、プロジェクトチームには役員の方をはじめ営業、広報やマーケの方も入っておられました。トップダウンとボトムアップがうまくかみ合うと、メッセージが強くなり、読者目線も徹底できると思います。冒頭でお話しした言行一致の実現にもつながります。

 今は所属と本名を明かして個人のTwitterやInstagramをしている人も増えましたよね。そういう社内インフルエンサーを対外発信の文脈づくりに巻き込むのも手だと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/25 16:33 https://markezine.jp/article/detail/40644

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