※本記事は、2022年11月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)83号に掲載したものです。
企業がコンテンツを生成 “雑誌的に”発信する
——今回は、企業のブランドジャーナリズム実践の支援を目的に起業された林さんにお越しいただきました。御社の設立に先駆けて実施されたオンライントークイベントには、高広伯彦さんや境治さん、withnews前編集長の奥山晶二郎さんなどそうそうたるメンバーが参加され、とても興味深かったです。
ありがとうございます。多くの方に「ブランドジャーナリズム」について関心を持っていただく機会になりましたし、私もとても勉強になりました。
——改めて、ブランドジャーナリズムという概念について教えてください。
明確な定義はなく、いろいろな考え方がありますが、2004年に当時マクドナルドのCMOだったラリー・ライト氏が提唱したと言われています。あるマーケティングのカンファレンスで語られたもので、のちに論文も発表されました。
その内容とは、これからの企業は自らがジャーナリストの視点を持ち、取材やリサーチなども通じて記事や動画などのコンテンツを生み出し、自社サイトやオウンドメディアを介して広く社会に発信していこう……というものです。ライト氏の話では“雑誌的に”という言葉が使われたのですが、それが特徴だと思います。自社を多面的に捉え、ジャーナリスティックに掘り下げて、雑誌のような発信をすべきだという提案でした。
背景には、デジタル化が進んで情報の届け方も複雑化する中で、特にマクドナルドのような世界中に知られたブランドは画一的なメッセージではすべての顧客に届かない、という氏の課題意識がありました。ブランドジャーナリズムは、その後にオウンドメディアが興隆する流れにもつながっていったと思います。
——ブランドジャーナリズムの概念は、どういった意見を巻き起こしたのでしょうか?
これは平たく言うと、マーケティングの世界とジャーナリズムの世界の両方にまたがる概念です。マーケターの側には期待や賞賛の声もあったのですが、一方でジャーナリストの間では反発が大きかったんですね。「我々は独立・中立のメディアとしてジャーナリズムを追求しているのに、そこに企業がビジネスの視点を持ち込むのはどうなのか」と。
議論はしばらく続きましたが、ライト氏自身がブランドジャーナリズムの考え方で多様なコンテンツを発信し、マクドナルドを苦境から回復させたこともあり、追随する企業が増えていきました。
今、グローバルではコンテンツマーケティングに近い概念として一般的になっています。ジャーナリストが事業会社に転籍して「ブランドジャーナリスト」になる例や、そもそもこの職務からキャリアを始める人もいます。ブランドジャーナリストの求人も海外だと多いですね。