web3の注目度が高まっている四つの理由
──言葉自体は以前から存在した「web3」ですが、なぜ今、注目度が高まっているのでしょうか?
木室:このタイミングで注目されているのには、四つの背景があると思います。一つ目は、技術が成熟してきたこと。少し前は、web3を構成するすべてのレイヤーを自分たちで用意しなければいけませんでした。たとえばコンテンツを載せるNFTを作りたい場合、ブロックチェーンを作り、コンテンツホルダーを連れてきて開発し、ユーザー獲得まで全部自社で行う。それが今は、イーサリアムなどの著名なブロックチェーンを選定して、その上に載せるコンテンツの開発に集中できるようになりました。デファクトの技術の登場は大きいと思います。
二つ目に、働き方の変化があります。コロナ禍の影響もあり場所を問わない働き方が好まれる昨今、まさにweb3が働く場所に関係なく報酬をもらえる仕組みとして注目されています。DAOやNFTの開発プロジェクトに国境は関係ありません。ポストされたDAOの仕事を実行すると、暗号資産で報酬がもらえるわけです。
三つ目に企業に依存しないインフラストラクチャーを追求する流れがあります。アンチGAFAのようなムーブメントもその一つです。プラットフォーマーに依存していると、有事の際にサービスがシャットダウンする可能性もあるわけで、そういった負の側面への抵抗も、web3への注目につながっているでしょう。
最後に、大きい要因として言えるのが「お金が集まっている市場」だということ。暗号資産から生まれた市場なので、金融系のステークホルダーが多いんです。そこで初期に成功した人たちが再びweb3に投資する流れもあります。産業の発展に必要な資産が潤沢である点も背景にあると思います。
web3は、若い世代の「ブランド認知」を変えるきっかけにもなる
──web3の時代に突入したことで、ビジネスにおいて起きている変化についてうかがえますか?あるいはどのような変化が期待できるでしょうか?
木室:消費者サイドの適応はまだまだこれからですね。というのもweb3に参入するにはまずウォレットを持たないといけないわけですが、ここには暗号資産やNFT、その他個人の保有している資産が含まれていて、自分の責任で管理する必要があります。しかしまだよく理解しないまま使っている人もいて、騙されることもある。そういった状況なので、これからユーザーのレベルアップが必要です。
一方で、理解度の高いユーザー層を日本だけで探すと小さな市場ですが、web3はグローバルにアクセスすることが可能で、たとえば特定のアセットを持っているウォレット一覧を出すこともできます。IPホルダーやブランド力のある企業がグローバルを対象にサービスを展開する場合は、大きなメリットを得られます。
アディダスやグッチなどは既にweb3を活用したマーケティングに取り組み、ブランド認知を向上しています。暗号資産を持つ若い年齢層にとって、そのブランドが既に古いと思われている可能性がある中で、NFTを使った施策で訴求すると、ブランド認知を変えるきっかけになると思います。
──今後日本でもそういった流れが来るのでしょうか?
木室:日本でも既にブランド力がある企業は動き出しています。暗号資産に対してはネガティブな印象が強い日本ですが、今後はNFTの文脈から入って、取引に必要な暗号資産にも適応していく流れになるでしょう。一昔前は暗号資産のトレードで儲けたい人が多かったものの、今はデジタルアートのクリエイターが参入して多様な市場になっています。しかし、暗号資産を持っている人は諸外国と比べて少ないですし、ユーザーの参入ハードルを下げる仕組みも必要ですね。
