“美”に対する価値観の変化を踏まえ、ブランドメッセージを刷新
――美に対する消費者の価値観の変化を受けて、Panasonic Beautyではどういった取り組みをされていますか?
Panasonic Beautyでは、「忙しいひとを、美しいひとへ。」というコピーを長年展開してきました。これには、子育て中のお母さんたちも含めて働く女性を我々が支えていきたいという、Panasonic Beautyの思いや女性たちへの応援メッセージのような意味合いも含まれています。そこから前述のような価値観の変化や多様化があり、Panasonic Beautyとして一人ひとりの美に対する価値観を重視しようと、ブランドメッセージについては議論を重ねてきました。「Panasonic Beautyはどういうブランドでありたいのか?」「Panasonic Beautyが届けるべき価値はなんなのか?」という根源のところからみんなで議論し、ブランドの大義書をもう一度作り直したような形です。

そうして策定したのが、現在のブランドメッセージ「テクノロジーで、確かな効果を。」です。長い歴史のあるパナソニックのブランドとして有する技術力や、クリニカルデータをもとに開発されている商品の品質の高さを、Panasonic Beautyの優位性として打ち出しています。
また、このメッセージはお客様への我々の意思表明でもあります。ブランドメッセージと我々の思いを書いたメッセージカードを商品に同封したりもしているのですが、これを受け取って、たくさんのお客様が「メーカーとしての自信を感じる」「パナソニックの歴史を感じた」などといった声をSNS上で寄せてくださりました。「忙しいひとを、美しいひとへ。」のコピーだと、これに共感する人にしか響かず、Panasonic Beautyの価値も伝わらなかったかもしれません。様々なお客様が「テクノロジーで、確かな効果を。」をいろいろに捉え、Panasonic Beautyの商品を喜んで使ってくださっていることがわかり、とても嬉しかったですね。

――「お客様にどう美しくあってほしいか」ではなく、ブランドの姿勢を示す形へ、表現を変えられたわけですね。
そうです。さらに前には15年以上続いたシリーズで、「きれいなおねえさんは、好きですか。」というコピーを使っていたこともありました。このコピーは非常に高い認知率を獲得していましたし、この時代に適した良いコピーだったのだと思います。大事なのは、時代に応じて、お客様の価値観に合わせて我々が変わっていくこと。今は、メーカー発信で何かを押し付けるような表現をする時代ではなくなってきていると考えています。
美容市場に限らずだと思いますが、今、“多様性”はどんな企業も取り組むべき共通のテーマです。みんなが“多様性”を重視するようになると、そこでは“均質化”が起きますから、ブランドとしての独自性をいかに伝えていくかは非常に難しいところです。マーケティングやクリエイティブを長年やっていると、どうしても尖らせたくなってしまいますし、他社との差別性を打ち出したくなるのですが、出せば出すほどメーカーからの押し付けになってしまうという難しさがあります。我々も悩みながら議論しましたが、ブランドの根元に立ち戻り、Panasonic Beautyの在り方を定義できたことに大きな意味があったと感じています。