Coke ON Walletで“ファイナンシャルサービスを提供したい”
MZ:日本コカ・コーラでは、2022年11月にオリジナルPay「Coke ON Wallet」を導入されました。導入に至った背景を教えてください。
永井:Coke ON Wallet構想の背景にあったのは「マーケティング手段としてのCoke ONアプリのフレキシビリティをより高めていきたい」という考えでした。
2016年にローンチしたCoke ONは、スマートフォン自販機(Coke ON対応自販機)と接続して、ドリンクを購入するとスタンプが貯まる仕組みです。要はスタンプカードで、スタンプ15個で当社製品を1本プレゼントする。値引きをモチーフにした設計になっています。
今回、Coke ON Walletを導入することで、そうした“値引き”のみならず、幅広いバリュー提供ができるマーケティング手段にCoke ONを進化させていきたいと考えたのです。
さらに、その先に見据えていたのは、自販機ビジネスには切っても切り離せない「小銭のデジタル化」です。これは、私が日本コカ・コーラに入社して、自販機関連のデジタルサービスの企画に携わるようになってからの長年の課題でした。
“デジタル化”というのは「電子マネーでのやり取り」以上の意味を持ちます。たとえば、自販機で商品を購入されたお客様にお釣りを支払う際、現金ではなく、Coke ON Walletの残高としてお渡ししたり、お客様が今お持ちの小銭をCoke ON マネーとしてチャージし好きなタイミングで使っていただく──こうした“ファイナンシャルサービスを提供する”ということです。
そうした価値提供も見据えた場合、既存の決済システムでは限界があると感じました。また、セキュリティ面や細かな課題にフレキシブルに対応するためには、オリジナルPayが最適だと判断しました。
末澤:オリジナルPayには、先程説明した「手数料負担の軽減」というメリット以外にも、永井さんがおっしゃったようにUXの向上というマーケティングのメリットもあります。
たとえば、オフライン購買においてアプリと決済機能が分断されていると、ユーザーはクーポンやポイント利用でアプリを操作し、決済の段階で別のアプリもしくはカードや現金などを出す必要があります。それでは、一貫した顧客体験を提供できているとはいえないでしょう。しかし、オリジナルPayを導入することで、アプリで情報発信から販促、決済、ポイント付与まで分断されることなく、シームレスな顧客体験を実現できます。
また、アプリと決済データが連携することで、データドリブン施策やCRMの観点でも活用が期待できる点もメリットでしょう。
プロダクトから運用まで一気通貫で支援
MZ:オリジナルPayの導入を進める中で、パートナー選定の決め手はどこにありましたか?
永井:インフキュリオンさんのこれまでの実績や安心感はもちろんのこと、最大の要因は、提供してくださるサービスが純粋なSaaSに留まらない点にありました。
今回、Coke ON Walletで扱っているバリューは大きく分けて2つあります。「ポイント」と「マネー」です。「Coke ON ポイント」では、今までのスタンプ機能に加え、キャンペーンの参加などでポイントが付与され、Coke ON対応自販機にて1ポイント1円で使うことが可能です。
「Coke ON マネー」は登録した銀行口座からCoke ON Walletにチャージできる機能で、チャージによってCoke ON ポイントも貯まる仕組みです。いずれのバリューも、ポイントの発行や運用管理などを一貫してインフキュリオンさんに担っていただいています。
末澤:当社の強みは、システムを提供するのみならず、事業の立ち上げから運用まで一貫した支援にあります。具体的には、⾃社オリジナルPayの構築‧運営に必要な機能を提供するのはもちろんのこと、資金決済法に準拠した運用など、専門知識の必要な準備や体制整備についても、総合的な支援が可能です。
今回、日本コカ・コーラさんの場合のように、自社で既にお持ちのアプリに組み込み、トンマナを合わせてカスタマイズすることもできます。