他人を通して自分の「ありのまま」を探しにいく
みなさんの考えをシェアし、ディスカッションを踏まえて見えてきたのは「人は他人のありのままを通して自分のありのままを探している」ことです。
自分のありのままを探そうとする人々の心は、昔から変わっていないように思えますが、探し方が時代に合わせて変化してきています。「自分探しの旅」という言葉があるように、旅はその方法の代表例です。他にも、本を読んだり人の話を聞いたりする方法もあるでしょう。これらが今も昔も変わらない自分探しの定番です。対して、令和の時代特有の「ありのまま」の探し方。それが「SNSで発信される他人のありのままを見ること」です。
SNSの普及により他人の「ありのまま」を目にすることが増えると同時に、自分で「ありのまま」を発信する機会が増えました。「ありのまま」のインプットもアウトプットもこれまでになく増えた現代で、人は今までになく「自分のありのままってなんだろう」と考えるようになったのではないでしょうか。
しかし、自分の「ありのまま」を見つけるのは難しいこと。だからこそ、人は他人が発信するありのままへ「憧れ」を抱いたり、ありのままらしきものを「演出」したり、これが本当にありのままなのだろうかと「葛藤」を持ったりするのではないでしょうか。他人の「ありのまま」を通して自分探しをしようとするインサイトが、今回みなさんから出てきた考えの根底にあると考えました。
自身の考察と照らし合わせ、磨き込む
今回、Cultural Talksに参加してくださった皆様から、感想をうかがいました。
「社外の人と話すことがあまりないので刺激になった」(岡野さん)
「これだけ話をする機会や、世の中の仕事を幅広く考えることが少ない。プライベートをさらけ出す機会にもなり、自分の会社でもやってみたい」(中野さん)
「お題をもらった時に“そもそもありのままとは?”と考えた。準備が難しい取り組みだが、お互いの考えを話せるのが豊かな時間だと感じた」(河野さん)
「自分の考えをさらけ出すこと」に新鮮味を感じていただいたようです。筆者自身も参加する中で、参加者の方々の価値観に触れ、自身の価値観と照らし合わせた上で、考えが昇華されていきました。共通のテーマをもって自らの考察を見せ合い、磨きあうことが、本取り組みの醍醐味の一つだと考えています。
企業の「ありのまま」と個人の関係
今回の「ありのまま」のCultural Talksから、企業が得られるヒントは何でしょうか。個人同様に「ありのまま」を発信する機会が増えている中、「自社からお客さんへの発信」と「お客さんから自社への発信」という2つにわけて考えられそうです。
企業が「ありのまま」を発信する際に心に留めておきたいのは、その「ありのまま」はあくまで「自分たちのありのまま」であり、他の考えもありうるということです。様々な「ありのまま」があふれる現代で、特定の考えを強制するような姿勢は反感を招きます。その上であえて強い姿勢を示す考えもありますが、生活者との対話を望むのであれば常に他の考え方がある前提で自社の姿勢を発信するべきでしょう。
また、生活者が発信する「ありのまま」を企業としてどう受け入れるかも企業の姿勢が現れます。お客様は「どんなありのままを受け入れてほしい」のでしょうか。その「ありのまま」を受け入れる場や機会を設けることは、商品やサービスを提供する他に企業が社会で発揮する価値のひとつになるかもしれません。
本記事では「人は他人のありのままを通して自分のありのままを探している」と結んでおりますが、みなさんはいかがでしょうか。ぜひ今回のように気になるテーマを持ち寄って身近な人と対話してみてください。定量的なデータの観察からは見えてこない、新たな発見が得られるかもしれません。