高齢者の住みやすい街づくりを。青森県弘前市の取り組み
MarkeZine:冒頭でMaaSという言葉も出てきましたが、モビリティサービス領域での取り組みというのは、どういったものなのでしょうか?
福田:こちらはより良い社会を目指した準公共的な取り組みと捉えていただければと思うのですが、地域住民の交通課題や地域経済の活性化に向けてLINEでできることを、今色々な事業者様や地方自治体様と議論しています。
たとえば、青森県弘前市とMaaS Tech Japan様では「デジタルシニアパス」という施策が行われました。これは免許を返納されたシニアの方々へLINEで発行しているもので、利用者はLINEでデジタルチケットを見せるだけで市内のバスを自由に乗り降りできるようになります。ただパスをデジタル化するだけでなく、高齢者が普段どんな所に行っているのか、そこで何をしているのかをデータで収集しており、シニアの方々のニーズに即したより良い移動体験を提供するとともに、未来の街づくりにも活かしていこうとしています。
佐藤:特に地方のほうでは、大型ショッピングモールに高齢者を送ってあげることで、買い物難民が発生してしまうのを防ぎたい、といった狙いもあります。他にも、サツドラホールディングス様と江差町が中心となり、LINEで車両を呼んで乗り合わせ、買い物先の店舗などへ移動できるサービスの試験運行も行っていただいています。このような取り組みは、分散されていたエネルギーコストをまとめることにも繋がり、環境問題に対する副次的な効果も語られるようになるのではないかと考えています。
SDGs×コミュニケーションで広がる、無限の可能性
MZ:最後に今後の展望をお聞かせください。
佐藤:環境問題の話になると、森林のために、環境のために、生活で何かしらを我慢しなければならないという考え方に入ってしまいがちです。ですが、SDGsの活動は人間中心の社会において自分たちができることを考えるところがスタート地点だと思っています。
その人間社会を形成しているのは、“コミュニケーション”です。誰にどんな情報やサービスを届けると、どんな動きが生まれるのか、どんな活動を促すことができるかを企業や自治体の皆さまが考えていく時、LINEはコミュニケーションプラットフォームとして大きく貢献できると思います。我々もそうですが、自社にできることを考える時に、今の事業範囲から横に目を向けるのはなかなか難しいと感じます。ですが、社外の方々と少し話すだけで色々な発見が得られるんですよね。特にLINEはSDGs×コミュニケーションという立ち位置におり、ここから派生するものは無数にあると思いますので、様々な方々と議論していければ嬉しいです。
福田:よりサステナブルな形に事業をアジャストしていく、社会で求められている責任にしっかり対応していくということは当然重要ですが、一方で、新たな価値を創造していくという攻めの活動も必要だと考えています。事業者がLINEを活用して新たな取り組みを始めようとなった時、それをしっかり支えられるよう、プラットフォームとしてのバックアップ体制を整えていきたいです。最終的には、ユーザー側のLINEに対する期待感が上がるようなところまで繋げていければいいですね。
