心の中に直接、問いかけるマーケティング
非常に複雑な工程を経て特定した「11の欲望」ですが、この発見はマーケティングの進化に大いに貢献すると考えています。これまで、私たちは、人を、表に見えていることで分類するしか術がありませんでした。
11の欲望は、表には見えない心の中にあるものです。これを活用することで、表面分類ではなく内面分類が、マーケターの推理ではなく、システマチックに行うことが可能となります。
心の中に直接、問いかけるマーケティング。その扉が、今開かれようとしていると、私たちは考えています。
マーケティングにおいて最も重要なことは、求めている人に的確に情報や物やサービスを届けることです。デジタルマーケティングを中心にその機能は格段に進化しました。しかし、一方で私たちは偶然の出合い、いわゆるセレンディピティ(※7)の重要性を経験的に知っています。
心の中=まだニーズなどの具体的な形をまとう前の欲望にアプローチできるということは、セレンディピティを生み出せる可能性が高まることを意味しています。11の欲望を用いたマーケティングは、その実現にかなり近づいていると考えます。
本連載では、今後、欲望(Desire)行動モデル、11の欲望を起点とした様々な分析や、世の中の流行やヒットコンテンツなど、時世やトレンドについての欲望視点からの考察などをお伝えしていく予定です。また現在、電通ではCXやデジタルマーケティングにおいて欲望行動モデル、11の欲望をベースにしたソリューションを開発中です。その最新情報についてもご紹介していきたいと考えています。
注釈一覧
※1)マズロー(Abraham Harold Maslow):アメリカの心理学者。マーケティングを行う上で重要な考え方の一つとされている「マズローの欲求5段階説」を提唱した
※2)マレー(Henry Alexander Murray):心理学者。人間の持っている欲求を網羅的に書き出してリスト化した
※3)シャロームH.シュワルツ(Shalom H. Schwartz):社会心理学者、異文化研究者。人間の価値理論を開発。人間の価値観を10個に分類できるとした
※4)クレイトン・ポール・アルダーファー(Clayton Paul Alderfer):心理学者、コンサルタント。マズローの欲求階層説をERG理論(存在、関係性、成長)に分類することにより、発展させた
※5)ERG理論:アルダーファーにより提唱。人間の欲求をExistence(存在)、Relatedness(関係性)、Growth(成長)の3つに分類。ERG理論では最高次欲求を成長欲求としている
※6)因子分析:複数のデータの関連性を明らかにするための統計手法の一つ
※7)セレンディピティ:偶然の出会いにより予想外のものを発見すること、幸運を得ること
【調査概要】
タイトル:電通「心が動く消費調査」
調査目的:変化し続ける社会環境により、可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く
対象エリア:日本全国
対象者条件:20~74歳
サンプル数:3,000サンプル(20〜70代の6区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
調査手法:インターネット調査
調査期間:調査期間:2021年9月、2021年12月、2022年5月、2022年11月(計4回)
調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト