実在するZ世代からペルソナを立てていくには
森永:周りに若い人がおらず、実在するZ世代へのヒアリングが難しい方もいると思います。こうした場合、インタビュー対象はどのように見つけてくるのがよいでしょうか。
今瀧:1つは新卒など若手社員に聞くやり方。もう1つは、Z世代のお子様を持つ社員経由で聞くことです。
当社の事例を挙げると、Z世代をターゲットに、Z世代のお客様や社内メンバーにヒアリングしながら作った「デジタルデトックスカフェ」があります。SNSネイティブであるZ世代向けの、あえて電子機器を手放して過ごせるカフェです。

今瀧:結果的に、Z世代以外の方々もたくさん来たことが驚きでした。成功した要因としては、ターゲットであるZ世代が、SNSを通して他の世代に広げてくれたからです。Z世代をターゲットにすることで、実は他の世代にも広がっていきました。
森永:Z世代と近しい感性を持つ人は、実は他の世代にも比率は違えど存在するのですよね。
加えて1つ疑問に思っていたのが、Z世代を含めたSNSを使いこなすユーザーは、企画の過程で実情に向き合って色々考えた末にその施策にたどり着いた会社と、近道してターゲットのトレンドをとりあえず施策に取り入れた会社を見分けられるのはなぜなのでしょう。
今瀧:今は色々な方法で調べられるので、「見極め力」が高まっている気がします。Z世代目線では、SDGsマーケティングに違和感を覚える部分もあって。調べればわかることなので、「うちはSDGsに取り組んでいます」とメッセージだけのアウトプットだけを出されても、困ってしまうZ世代も多いです。
Z世代のメディア行動の真実
森永:続いてZ世代とメディアについて話していきたいと思います。Z世代に聞き取り調査をしたところ、SNS活用態度の特徴は3つありました。
一つ目は、SNSに常時接続していて、どんなメディアにアクセスするにもSNSがベースになっていることです。SNSは情報行動のホームポジションで、SNS経由でテレビを見たり、ネットニュースを見たり、雑誌・新聞を買ったりしていることがわかりました。

森永:二つ目が、日常的なメディアと能動的なメディアがこれまでの世代と逆転していること。上の世代にとっては家でつきっぱなしだったテレビやラジオが、日常的に触れて目に入ってくるメディアで、インターネットは「わざわざ見に行く」能動的なメディアです。一方、Z世代はSNSが日常的なメディアで、テレビやラジオはわざわざ情報を取りに行くメディアになっています。
そして三つ目は、上の世代の反省でもありますが「インターネット=能動的メディア」だと思いこんでいたことです。2000年代の中盤に「これからデジタルネイティブ世代が育つぞ」と上の世代が想像していたのは、能動的にデジタルを使いこなす恐るべき子どもたちでした。ところが今調査してみると、本当のデジタルネイティブ世代は、すごく受動的にネットを見ている様子でした。

森永:こうした特徴を持つZ世代がどれぐらい存在しているか、2022年10月に調査しました。わかったことは、「スマホを手にするとタイムラインを開く」10~20代は予想通り多い中、30~40代の女性も多いことです。そこで「新しい情報と出会うのはSNSが多い」にもYesと回答した人を「タイムライン生活者」と名付けて傾向を探ってみました。

森永:タイムライン生活者は10~20代の女性で6割近く、男性は3分の1程度。またタイムライン生活者は情報だけでなく世の中の「動向」もSNSから知る傾向が強く出ました。
「そういえば最近、色々な人が言っていた」「よく見た・聞いた気がする」という、自分の身の回りに対象が「なじんで」きたときにヒットしていると感じるようです。となると、今までの広告事業は「アテンションを取る」ことを重視していましたが、Z世代には「アダプテーション(なじむ)」までのコミュニケーションが大事になってきます。

森永:また、この人々がオンライン至上主義ではないことも発見でした。実はネット常駐型の人こそ、リアルやオフラインの関係を重視すし、様々なメディアを見て情報のバランスを取ろうとする傾向があるのです。
まとめると、これまでは「若い人とネットが得意な一部の人が能動的にデジタルをたくさん使いこなす」と捉えられがちでしたが、「ネットに非常に受動的に向き合う、若年層と女性を中心とした新たな一般層」が出現していることが実態となってきているかと思います。