顧客獲得件数増の鍵はコンテンツの量より届けるタイミング
次にプラブネ氏は、過去2年間のコンテンツ需要の伸び率が2倍だったのに対し、今後2年間ではコンテンツ需要が5倍になるとの試算結果(2023年実施のアドビ調査に基づく)を示しつつ、自社のコンテンツ供給力について三人にコメントを求める。
村岡氏は「当社のコンテンツ供給力は低くない」と前置きしつつ、グローバル展開ならではの課題を語る。
「カシオ計算機のWebサイトは多言語展開しているため、各コンテンツは内容の翻訳のみならず、画像の差し替えなどの工夫が必要です。そのため、供給力がより伸びるようにAI利用も含めてチャレンジしていければと思っています」(村岡氏)
近藤氏は「BtoBビジネスにおいては、コンテンツ量と顧客の獲得件数は必ずしも正比例になるとは限らない。件数を増やしたいのであれば、コンテンツの量を増やすよりもむしろ『顧客にとっていかに最適なタイミングでコンテンツを届けられるか』に注力したほうが良いのではないか」と指摘する。
プラブネ氏はコンテンツ供給力に続き、コンテンツの制作体制についてもパネラーに質問。近藤氏によると、日商エレクトロニクスではSEO対策記事といった量が求められるコンテンツの制作は外注しているとのこと。一方で、リードの獲得につなげるような質が求められるコンテンツは内製していると説明する。
堀野氏は自社の制作体制について、次のように語る。
「かつてはコンテンツ制作のインハウス化が潮流としてありましたが、今では内製・外注を使い分けている企業が多いのではないでしょうか。そうした中で、課題となるのがコンテンツのトンマナの一貫性です。一貫性を持たせるための仕掛けづくりが重要だと考えています」(堀野氏)
AIに任せられる業務と任せにくい業務の違い
プラブネ氏は、話題をコンテンツから昨今注目が集まっている生成AIにチェンジ。現状、AIを現場の業務にどこまで活用しているかを三人に質問する。
堀野氏によると、マクニカでは3~4年前にデータ整理に着手。AIソリューションのベンダー企業でもあるため、社内でのAI活用も段階的に進んでいるという。
日商エレクトロニクスでもChat GPTを活用したコンテンツチェックなどは現場で既に行われているという。「AIをマーケティング業務に活用する過程で“AIに任せられるもの”と“まだ任せづらいもの”があることに気づいた」と近藤氏。たとえば、データに基づいたセグメンテーションや最適なタイミングでの配信業務はAIに任せても良いとのこと。なぜなら、マーケターに業務の知見があり、AIの提案に対し明快に判断が下せるからだ。
一方で、これまでにない斬新な施策など“0から1”を生む作業では、マーケター自身が施策のイメージを明確に描けていて、かつ顧客のインサイトも正確に把握しておくことが求められる。つまりマーケターに知見がないため、AIに任せるのはまだ不向きだと感じるそうだ。「業務へのAI活用を進めるには、マーケター自身も進化する必要がある」と近藤氏は続ける。
「マーケティングは最終的には人と人とのコミュニケーションで成り立つもの。アドビさんも提唱されている通り、AIはあくまで“co-pilot(副操縦士)”として活用するつもりです」(近藤氏)
Adobe Summit 2023の現場の様子を、参加者の生の声で聞くことができた本イベント。また「マーケターが今後、AIとどう付き合っていけば良いのか」「どうバリューを発揮すれば良いのか」といった不安の共有もAdobe User Group Dayの成果の一部といえる。Adobe User Groupが新たに発足した今、マーケター同士の連帯は今後一層強まるに違いない。
「Adobe User Group Day – Insights from Adobe Summit」のアーカイブ視聴はこちらから
本イベントの内容は一部に限りオンライン視聴が可能です。下記のリンクからご覧ください。