※本記事は、2023年5月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)89号に掲載したものです。
【特集】テレビ×マーケティング2023
─ ROI最大化と、意味ある出会いの創出を両立する。日産と博報堂DYが考えるテレビ活用の可能性
─ 電通が語る、テレビCMの現在地 価値最大化のカギは「高度化×爆発力」(本記事)
─ テレビCMも含めた統合マーケティング、MMMでどこまで可視化できるのか?
─ 早期かつ継続的な出稿で真価を実感 Sansanに学ぶBtoB企業のテレビCM活用法
─ 視聴者を釘付けにするテレビCMに共通する要素とは? REVISIOの視聴質データから考える
─ 目指すはお笑い界のスーパーボウル。M-1グランプリが示す「テレビの力」と「世の中の巻き込み方」
─ DL数6,000万を突破、広告事業は前年比200%超で成長:広告媒体として見る「TVer」の概況
─ 月間3,500万人がテレビでYouTubeを視聴する今、Googleが考える広告活用とは?
─ 「なぜCTV広告なのか」をまずは徹底的に考える。CTV広告活用に必要な観点とは
電通が進めてきたテレビCMのDX
──テレビ広告枠の取引に携わっている電通のラジオテレビ局はその歴史も長く、テレビ×マーケティングの変遷を長年見てこられました。テレビ×マーケティングの課題に対して、ラジオテレビ局は今どんなことに向き合っているでしょうか。
布瀬川:特に若年層にはテレビCMが届かない……といった課題が近年叫ばれています。私は2015年からラジオテレビ局に所属していますが、当時すでにテレビCMは変わらなければいけないと電通は認識していました。テレビCMという長年確立されてきたビジネスモデルを変革することは容易ではありませんが、テレビCMの価値を最大化するために必要な変革を推し進めています。
重要なのは、テレビCMだけでないメディアソリューションと併せて、いかにトータルでコミュニケーションを届けるかです。テレビCMとその他の広告を統合的に見ていくためには、データによるテレビCMの可視化が不可欠です。あわせて、広告メニュー開発などの新たなソリューションの提供も必要になってきます。たとえば、直近ではテレビCMとデジタル広告の統合分析を行う「MIERO Digi×TV(ミエロ・デジテレ)」をリリースしています。
──テレビ×マーケティングのデータドリブン化は、とりわけニーズの大きいところです。
布瀬川:そうですね。前提として、テレビCMにおいてはすべてのデータを収集することは不可能だと思っています。1回放映したテレビCMを1,000万人が視聴したとして、その1,000万人の視聴データを丸々取ってこれるかと考えると、やはり不可能に近いでしょう。そのような中でも、前述の通りテレビCMの可視化を目指した開発は日々進めてきており、すでにこの課題は解決できるレベルになっていると思っています。
ただ、テレビCMやその他の広告施策を統合的に管理するためのデータ環境は、広告業界全体として、まだ完全に整っていません。Web広告やSNS広告も単一で見たときにはPDCAを回すのには十分なデータが揃っているかもしれませんが、複数のメディアを組み合わせたときに、どんな指標を使って効果検証を行うかという答えはまだ明確にありませんし、プライバシー保護などの問題もあって他メディアのデータと重ね合わせることもできない。ゆえに、たとえばキャンペーンで大きな成果があったとき、どの媒体で当たったのかを直接的かつ統合的に見られないことはひとつの課題だと考えています。