テレビCM出稿の目的「配荷率アップ」による売上向上も分析可能
──パス解析とブランド・エクイティ分析について、それぞれ詳しく教えてください。
パス解析では、オンオフで実施した様々なマーケティング施策がどのような経路をたどって成果につながっていったかを視覚的に可視化します。このとき、成果に影響を及ぼす要因はマーケティング施策だけではありません。競合の動きやインフレ、コロナなどの外的要因も含めて分析を行います。
たとえば、消費財メーカー様がテレビCMを打つとき、その目的の1つとして「配荷率を上げること」があったりしますよね。もちろん、消費者に向けた短期的かつ直接的な売上増のための施策でもありますが、「店頭の棚を盛り上げる」という間接的な狙いもあるわけです。このとき、パス解析ではその中間に「配荷率」というステップを置くことができます。つまり、テレビCMを打ったことでどのくらい配荷率が上がったか、その結果どれくらい売上が増えたのかの関係性を分析することができるということです。配荷率のほかにも、検索数やSNSでのエンゲージメントを中間に持ってくることも可能です。
もう1つのブランド・エクイティ分析は、広告施策によるブランディングの蓄積効果を測るための機能です。MMMで分析にかけると「テレビCMの売上への貢献度があまり良くない」という結果が出てくることが度々あります。ただ、短期的な売上増には効果がなくとも、テレビCMを長期的に打っているからこそ築かれるブランド力はありますよね。実際、これを目的にテレビCMを打っている企業も多いはずです。ブランド・エクイティ分析では、売上をKPIにした効果検証とは別に、向こう数年のブランド力の向上を軸にした効果検証を行うことができます。
MMMによる分析の具体例
──どのような企業がMMMを用いてどのような取り組みを行っているのか、具体的にイメージできる例はありますか?
ある金融保険系の企業様は、より効率的なテレビCMの展開を目指して、様々な軸で分析をされています。まずは、エリア別のアロケーションの最適化です。エリア別に細分化して効果検証を行い、効率の良いエリアにより多くのテレビCMを投下することで、同じ予算でもより良い成果を出すことができるようになっています。
また、テレビCMの枠は大きくタイム/スポット、15秒/30秒の枠で区分されます。どの枠がより成果につながるのか、しっかりとしたロジックなく投下判断をされている企業も多いかもしれません。先の金融保険系の企業様の場合は、どのCM枠だと成果効率が良いのか、さらにはどの番組のCM枠が効率が良いのかを分析し、「ここの番組提供をやめて、その分をスポットに寄せよう」といったアクションを起こされています。
もう1つ、ある消費財メーカー様は、商品の価格を1円下げるとどのくらい売上増加が見込めるのか、という観点で分析をされています。最終的にはどの金額が売上最大化につながるかのシミュレーションを行う形です。あるいは「広告施策だけでこの目標値を達成することはできないが、配荷率を〇%まで上げられれば達成可能な範囲になる」などと、プランニングの時点で分析を行うこともあります。
