「CPAが見合う/見合わない」の議論に終始しないことが大切
──テレビCMを案件創出へとつなげるために行っていることをお聞かせください。
営業担当者への周知を忘れてはいけません。テレビCMの出稿を社内へ意識的に共有しなければ、気づかれないうちに放映期間が終わってしまいます。最も良くないのは、営業担当者がお客様から言われて初めてテレビCMの放映を知るパターンです。

営業に活用してもらうために、当社ではテレビCMの放映期間や番組名をまとめたタイムテーブルを作成し、社内のSlackで共有しています。タイムテーブルがあれば、営業担当者は「この日に放映されるなら、お客様との会話にはこう取り入れよう」という具合で活用してもらえるためです。
──最近はBtoB企業のテレビCMを目にする機会が増えました。一方で「出稿費用が高額」「投資対効果が見えにくい」などの理由から、出稿に依然ハードルを感じている企業も少なくありません。長年テレビCMを出稿してきた貴社だからこそ感じる、テレビCMの価値や出稿メリットを改めてお聞かせください。
短期的に見るとリード獲得や商談創出などに一定の効果がありますし、中長期的な価値で言うと、先ほどお伝えしたとおりブランディングの観点で資産を積み上げることができると考えます。
大切なことは短期と中長期、両方の視点を持つことです。数字を見て分析し、事業成長への貢献度を確認することはもちろん重要ですが、短期的な視点だけでは「CPAが見合う/見合わない」の話で終始してしまいます。そもそもテレビCMによる純増を厳密に測ることはできません。そのため、短期的な指標だけでテレビCMの価値を測る姿勢には疑問を抱きます。むしろ本来のテレビCMの価値は、中長期的に資産を形成しながら顧客の信頼を獲得できる点にあるはずです。継続的に出稿して初めて真価が発揮されると思います。
当社の場合は早いタイミングで出稿し、かつ継続してきたからこそ価値を感じています。長期的な出稿がもたらす価値を経営層が認識した上で意思決定をしていくことが、BtoB企業では特に求められるのではないでしょうか。
──最後に、本号のテーマに沿って、北川さんもしくはSansanがテレビ×マーケティングで取り組みたいチャレンジをお聞かせください。
SaaS企業の中でもいち早くテレビCMへ取り組んできたように、まだ誰もやっていないことをするのが当社のマーケティングの特徴であるため、これからも新しいことにどんどんチャレンジしていきたいです。

私個人としては、プロダクトの価値を体験していただくための取り組みに注力していきたいと思っています。SaaSのような無形プロダクトの価値は、Web媒体だけではなかなか伝えにくいもの。プロダクトを体験したときの感動などを、テレビというメディアを通してより多くの方に届けていきたいです。スポットのCMというよりは、提供番組の制作やパブリシティなどの選択肢も考えられます。テレビの持つリーチ力との相乗効果で、面白い取り組みができるのではないでしょうか。