A4用紙6枚分から推敲を重ねた表明文
──店舗は誰もが足を運んで楽しむことのできる開かれた場所である一方、それぞれのニーズを持つ人々が同じ空間を共有する公共性も備えています。店舗という特定の空間でSoup for all!を実現する難しさはありますか。
難しさは感じています。実際、店舗のバリアフリー化を望むお声には物理的な制約やコスト面から直ちにお応えできていないのが現状です。だからと言って何もしないのではなく、できることをするのが私たちのスタンス。「事業規模が大きくなってから」「店舗数が増えてから」とは考えません。不完全でも思いがあるなら半歩を踏み出します。

──反響を受けて4月27日にWebサイトで公開された表明文からは、書き手による熟考の跡が感じられました。あの表明文を世に出すまでの一部始終をお聞かせいただけますか。
想定外の反響ではありましたが、私自身は平常心でした。中止は頭になく、「どうすれば続けられるか」しか考えていませんでしたね。
続けるためにはこの取り組みが思い付きによるものではなく、文字通り毎日言い続けてはパートナーと実践してきた企業理念「世の中の体温をあげる」に裏付けされたアクションであることを知らせる必要があります。発言のタイミングや場所を間違えると意図しない反応が生まれると考え、表明文の公開前は全ての取材依頼をお断りしました。
表明文を作成するにあたり、私の頭の中にあった言葉を紙に一旦書き出してみたところ、A4用紙6枚分のボリュームになってしまって。そこから推敲を重ね、信頼する顧問の方と何度もやりとりしながら1枚弱に収めました。
Soup Stock Tokyoという人格
表明文の公開タイミングをランチタイムに設定したのは、一人でも多くの方に読んでいただきたかったからです。ブランドサイトを訪れ、全文を読んでくださった方から徐々に広がっていくことを願い、SNSの公式アカウントではあえて告知しませんでした。
──表明文の結びを松尾さんの名前ではなく「株式会社スープストックトーキョー一同」としていた点も印象的でした。
私はブランドを一人の人格として捉えています。表明文は「Soup Stock Tokyoさん」が語る言葉であり、社長の私は人格の一部に過ぎません。そして「世の中の体温をあげる」という理念の実現を担っているのは、紛れもなくスープストックトーキョーの従業員一同です。この表明文はステージに立つ皆の決意表明だと考えました。
「一同」と書いた以上、勝手に公開することはできません。公開予定日にオンラインで行った朝礼で、表明文を公開する意図や込めた思いを私の口から皆に伝えました。朝礼の終了後、発言内容を文字に起こして社内のコミュニティサイトへ即時アップしたのは、朝礼に参加できなかったメンバーに対しても情報を共有するためです。
