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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2023 Spring

スマドリ×fermataに聞く、社会課題解決×売上向上につなげるマーケティングに必要な視点

社会課題の解決×売上利益の向上を両立させるポイントとは?

 次に廣田氏から、社会貢献活動においては避けては通れない、売上利益の向上との両立に関する話題が投げかけられた。社会の役に立つ意義のある事業であっても、売上利益を出さなければ企業が存続できない。

(C)beeboys - stock.adobe.com
(C)beeboys - stock.adobe.com

 大企業からスピンアウトしてスタートアップを立ち上げた梶浦氏と、フェムテックを軸に大企業のマーケティング支援なども行う中村氏。事業の在り方について異なる視点を持つ2人はどのように考えているのか。

 梶浦氏は、「アサヒビールの既存事業とスマドリ社が取り組んでいる新規事業のアプローチはまったく異なる」と語った。

 「これまでアサヒビールでは、オーソドックスなマーケティングを行ってきました。ビールをはじめとしたお酒が好きな方々にリサーチをし、コンセプトやパッケージの受け入れられ方をデータ化して発売し、購入につなげていく。商品を出せば次の瞬間には、売上が数値として出る世界で生きてきたんです。しかし、スマドリではその時間軸がまったく通用しないと感じています」(梶浦氏)

 スマートドリンキングの対象となる微アルコールやノンアルコールの飲料は少しずつ浸透しているものの、まだ一般的なアルコール飲料に比べると大きな市場にはなっていない。そのため、梶浦氏は「まずスマートドリンキングについて伝える場と時間が必要」とし、長期的に投資を続けながら、途中経過を細かく見ていっているという。

 一方中村氏は、企業のコンサルティング業務において自身が重要視している点に言及した。

 「『フェムテック』というワード自体は、この2、3年でバズワードのように使われるケースも増えています。しかし、『流行っているから』だけで取り組んでも短期的な成果が見えず、本来の目的を見失います。企業様やその担当者様が『なぜフェムテックに取り組むのか』の目的を言語化できるようにサポートことが重要だと思います」(中村氏) 

 社会課題を起点にビジネス・マーケティングに取り組むとき、一つの商品・サービスを作ってすぐリターンを得られるわけではないことは、理解しておくべきだ。中村氏も「ニッチかもしれないけれども、絶対需要はあるもの。イノベーションカーブを描いていくソリューションを生んでいくためには、長期を見据えた計画が重要なポイントになってくる」と説明した。

未来志向なマインドセットが新しい価値を生む

 新たなビジネスは、トレンドを追っているだけでは生まれてこない。お酒を飲めない・飲まない人、そして女性は当然ながら昔から存在する。では、その人たちが喜ぶビジネスをどのように作り、アプローチしていくべきなのだろうか。廣田氏は、新事業のマーケティングに取り組む際のマインドセット・スキルセットについて尋ねた。

 梶浦氏は「顧客志向はベースとしながらも、“未来志向”も大事にすべき」とコメント。

 「こうしたビジネスは、時間もかかり、すぐに売上につながるようなものではありません。今世の中にないカテゴリーや新しいライフスタイル、文化のようなものを作っていく。こういったことをモチベーションにできる人のほうが向いていると思います」(梶浦氏)

 それに対し、中村氏からは「トレンドではなく文化を醸成するというマインドセットが、新しいイノベーションを起こしていくとは感じている中で、やはり消費されるスピードも格段に上がっている。文化を醸成したとしても、その文化自体もすぐ消費されてしまうのではという不安がある中で、どのようにマーケティングやブランディングをしていくのがよいか」と現在中村氏自身が抱えている課題について言及した。 

 廣田氏からは、本当のインサイトを捉えた質の高さがより重要になっているのでは、との話が出てきた。

 「コミュニケーションのスピード感が求められていると思っている一方で、モノやサービス自体のクオリティが求められていると感じます。SNSが普及し、消費者が声を上げられるようになっていることもあり、質の悪さが隠せなくなってきているんです。だからこそ、消費者のニーズを捉え、単なるトレンドや一時のコミュニケーションだけに踊らせないことが大事になると思っています」(廣田氏)

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手段ではなく目的をゴールに見据える

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この記事の著者

釘﨑 彩子(クギサキ アヤコ)

 2019年からマーケティング・広告の専門出版社で編集者として勤務。広報・PR分野を中心に編集業務にあたる。2022年よりフリーランスのライターに。媒体問わず、マーケティング、広報、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/18 08:30 https://markezine.jp/article/detail/42618

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