【一覧表付き】著作権対応を全体像から確認!
野口:次にお聞きしたいケースは、自社のWebサイト内で映像・写真などのコンテンツを使いたい場合です。条件や注意点としてはどんなことがありますか。
福井:著作権や、それに近しい権利の全体像をまとめてみました。以下の図を見ながら確認していきましょう。

福井:一番上の行には、文芸・俳優の演技・音源など、使う素材や働く権利が並んでいます。今回のケースは左から2番目の列の著作権となりますね。一番左の列は、行いたい利用方法を並べています。
たとえば撮影やコピー、ネット配信などがあり、素材との交点のマスに丸が付いている場合は、権利が働きます。したがって対象物の権利者の許可がないと、該当行為はできないことを意味します。
映像素材に俳優やミュージシャンが関わる場合、彼らの演技・歌声・演奏などは中央の列の一番上にある「著作隣接権」が働きます。その隣に位置する音源の著作隣接権は、レコード会社などが管理しているものです。
野口:なるほど。この表を見ていくと、対応すべきことかどうかの判断ができるわけですね。

福井:そうです。ポイントは、対象コンテンツを分解することです。
たとえば映像は色々な要素から成り立っていますよね。映像はもちろん著作物ですが、下敷きにある構成台本や挿入される画像、流れる音楽なども著作物で、それぞれに権利者がいます。対象をまず分解し、必要な権利者に許可を取りに行くことが原則です。
とはいえ、すべてに毎回許可を取りに行くのも大変です。そこで、「許諾」「被許諾」の組み合わせがカギとなります。これは「例外規定」として許可がなくても利用できる場合があるということです。
その知識を持っておき、許諾を取る対応と取らない対応の両方を適切に組み合わせることが大切です。そうすれば、情報発信で大きな落とし穴に落ちるリスクを減らせるとともに、本当は問題ないことにまで権利侵害を恐れて萎縮する必要もなくなります。
許諾なしで著作物を使用できるケースとは
野口:続いてのケースは、自社主催のウェビナーやオンラインセミナー配信で、参考資料として動画を紹介したい時です。この場合、許諾は必要でしょうか。
福井:著作権法には、権利者の許可がなくても使える例外規定が多く存在します。今回のケースの目的はYouTube動画を見せて視聴者に楽しんでもらうことではなく、それをもとに何かの解説をしたいのではないでしょうか。
この場合は「引用」という例外規定のもと、動画の使用が許されています。注意点として、引用した作品と自分の作品の境界が混ざることは避けねばなりません。これを明瞭な区別といい、文章の場合は括弧で括ったり段を下げたりして、別の人の文章を紹介している部分だとはっきり示す必要があります。
引用は、程度も重要です。主従関係という呼び方をしますが、メインは自分の作品であり、あくまで引用部分は説明の補足程度にとどめておきます。また引用したコンテンツを勝手に改変することも禁止です。
加えて、誰の何という作品なのかを示す、出典も明記しておきましょう。記事のURLや書籍の著者・出版社、絵画の作者・所蔵先など、「誰の・何という作品か・どこにあるのか」を引用箇所のそばに記載することが大事です。