体験や情緒価値の訴求に軸足を置いた顧客目線のデザイン設計
MZ:今回のクリエイティブではどのような部分を意識されましたか。
中嶋:我々は、本質的にDMは広告ではなくて企業から顧客への手紙だと思っています。それをクリエイティブで表現することに重点を置いて考えました。
その観点から見た時に、ポーラ様の従来の圧着DMは、プロモーション色が強い印象でした。そこで、改めて体験・情緒価値の訴求に軸足を置き、顧客とのコミュニケーションを考えていきました。
中嶋:最初、当社から出したラフは、ポーラ様の色をほぼ無くし、お客様がどう受け取るかのみを考えたクリエイティブのものでした。その後、ポーラ様の世界観や想いとすり合わせ、融合させながら試行錯誤を行っていき、今回のDMができあがりました。
多賀:今回のDMは、手書き風な親しみあるデザインが特徴的です。ポーラ公式オンラインストアをご利用のお客様にはこれまでこのようなデザインのDMを出していなかったのですが、フュージョン様からも「高価格帯であることも踏まえると、親しみやすいデザインを試してみてもいいのではないか」と、お客様目線に立って提案をいただいたことで、人肌感がある寄り添ったデザインで進めることができました。
F2転換率は2倍に 肌の透明感を表現した透けて見えるDM
MZ:今回の施策を「直感刺激DM」と銘打っていますが、どのような意図、工夫があったのでしょうか。
中嶋:今回のDMでは、商品を買ったことがある方がターゲットということもあり、「私に届いた」と直感的に伝わるデザインを意識しました。
封筒に半透明の紙であるトレーシングペーパーを使用することで、商品の写真が透けて見えるような設計になっており、「透き通る肌」を目指すという商品の特徴や訴求したいポイントも視覚・体感的に伝えられるデザインになりました。また、透けて見えることにより開けたくなる気持ちを促す設計にもなっています。
MZ:封筒の中身にはどのような工夫を施しましたか?
中嶋:封筒の中には二つ折りのカードを入れて、「リンクルショット」「ホワイトショット」を並べて紹介するデザインにしています。
さらに、それぞれの使用方法を解説動画のQRコードを付けて紹介して長時間使用し続ける大切さや日々のケアのコツをご紹介したり、研究員のコメントを示したりすることでリピートにつなげる設計になっています。また、DM限定のオファーであるキットを多賀さんが企画されていたので、それを購入できる特別感も持たせています。
MZ:現在のDMに変更してから具体的にはどのような成果が表れましたか。
多賀:2022年8月にこのDMを開始した当初は、サンプルを付けたものとのABテストを行いました。しかしサンプル無しの方が、反応が良いことがわかり、2、3ヵ月目からはDMのみに絞って送付を行うようにしました。その結果、DMを変える前後で、F2転換率は約2倍になりました。軌道に乗ってからも引き続きF2転換率は改善を続けており、効果を強く実感しています。
加えて、併売率も約3倍に伸長しました。今回のように二つの商品を横並びで紹介する見せ方には、併売を促す効果を感じています。