※本記事は、2024年11月刊行の『MarkeZine』(雑誌)107号に掲載したものです
【特集】進むAI活用、その影響とは?
─ 生成AIがクリエイティブとデータをつなぎ、顧客体験を変えていく。アドビに聞くビジョンと現在地
─ 最初から完璧を目指さない ハイテクなイメージをあえて遠ざけた東急のAIコンシェルジュ
─ 組織の生成AI活用を最大化するためには?リクルートの生成AIプロジェクトが実践する4つの施策
─ 生成AI活用に驚きがなくなった今、企業が意識すべきこと
─ AIリスクを正しく理解し、活用を前進させるためのガードレールを。
─ 新たな概念に気づけるか 電通キーパーソンが語る、AIにより不可逆的に進むマーケティングの大変革
─ AIデータセンターと電力エネルギー 巨大テック企業による成長連鎖(本記事)
─ AI時代に「ネット検索×消費行動」はどう変わる?今後は「他社との優劣」よりインサイト把握が重要に
─ 「Copilot」でMicrosoft広告はいかに進化するのか ユーザー体験の向上がもたらす広告効果
AIには「圧倒的不足」の電力
AIという広大なテーマの根幹に、「エネルギー(電力)」需要という全産業にわたる重要な課題が存在する。経済産業省も「戦後最大の難所」としてエネルギー政策に強い危機感を示している次元だ。地球環境にも配慮しつつ、慎重かつ重要な経済価値の動きが感じられる。
図表1は、「国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)」が各調査団体から集計した、データセンター(AI)に必要とされる電力需要量の増加予測である。中間値(BCG社の推測値)でも、2030年には2022年の約「3倍」になる急激度だ。
脱炭素の方向を前提とし、この課題は単に太陽光パネルを広大な土地に敷きつめたり、風力ブレードを何百本も建てたりするような施設増設では解決できない。気まぐれな自然エネルギーではカバーできない、電力の「同時・同量」の安定確保が必須だからだ。
AIは今後、巨大な生物が増殖していくかのようにムーアの法則で成長を続ける。一時的にでも止まったり、レイテンシーが発生したりすると、日常生活(医療・金融・交通など)に障害を引き起こす可能性がある。
このAIによるエネルギー需要量増加は、巨大企業(国家)においては予測の範囲内だ。既に世界的な「新たなエコシステム」の構築に動き始めている、その成長連鎖を紹介していこう。