「UGCの総量」が企業の資産となる
MZ:企業はこれから、どのようにSNSを活用すべきとお考えですか。
金谷:結論としては、LINE施策に力を入れるのがいいと思っています。LINEは国内の月間ユーザー数が9,500万人(2023年6月末時点)もおり、その規模のメディアを持つのに等しいからです。これは日本では世代に関係なく、スマホを持つ人のほぼ全員に浸透し、水道のように「なくなった時の怖さを感じる」という意味では、もはや完全にインフラです。
もし企業がLINEに9,000万人級の友達を抱えていたら、キャンペーンもLINEでやるだけで済み、メディアや広告要らずになるでしょう。
MZ:購買行動にもSNSが重要になってくるのでしょうか。
金谷:SNSというより、UGC(User Generated Contents=ユーザー生成コンテンツ)がキーファクターだと思います。私は「SNSは、リアルな会話がオンライン化された場所」と定義しています。ですからUGCは、生活者がどのような会話をしているのかを把握するようなものだと言えます。
また、何かを購入する際にSNSで検索するのはあたりまえで、迷う時には誰が使っているのかを見たり、使っている人からのリアルな声を読んだりします。

MZ:購入の決め手もUGCの中にあるのでしょうか。
金谷:はい、購買時に背中を押すキーファクターは、自分に近い人、憧れている人たちが「これ、いいよ」と言っている状態です。そこから「買ってもいいものだ」と自分も安心感を持てるようになります。だからこそ生活者は、よりリアルな感想を求めて、本気で良いと思ったものを投稿しているSNSを見るのです。そのUGCを企業の資産もしくは経営のKPIにしていくべきだと、私は考えています。
MZ:どのようなUGCを資産として集めればいいのでしょうか。
金谷:集めるのは、自社、競合、市場の3つのUGCです。何かの施策を打った際にどのような反応が生まれているのかをUGCを見ながらPDCAを回せます。また、競合のUGC数の総量がポンと上がったとしたら、絶対に何かをやっているので、何をしたのか早めに把握して、次の打ち手を考えないといけません。
SNS上での顧客基盤の作り方
MZ:企業は、SNSでどのような投稿をしていけば効果的だと思われますか。
金谷:企業の投稿より、UGCをうまく生む施策が大切です。一般的な顧客ピラミッドは、20%のロイヤル顧客が売上の80%を作ると言われています。それをSNSの観点で見ると、非フォロワーが潜在顧客で、フォロワーが見込み顧客です。
一度購入履歴ができると、LINEやアプリ、メルマガなどに登録してくださいます。ここをファン層と捉える人が多いのですが、私はUGCを創出してくださる人々をファンとしています。この層をどう作っていくかが大事なのです。
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金谷:潜在顧客が見込み顧客になるきっかけは「コミュニティー」で、そこがカスタマージャーニーの入り口です。たとえば「この水、おいしいよね」と投稿しているのがファンで、それに反応しているのがコミュニティーです。企業としては、このコミュニティーを広げていくことが求められます。
そのために、まだファンとなっていない人たちに投稿やフォローで参加していただくための施策が必要です。そこでSNS上でコミュニケーションをすることでつながりを作りコミュニティーに引っ張ってくるのです。
