物価高の影響は?2023年下半期「心が動いた消費」の有無
新型コロナウイルス感染症の五類化を経て、ようやく人々の気持ちが前向きになってから半年強が経過しました。消費者にとってサステナブルな消費生活を読み解き、好循環な消費の在り方を提案する電通デザイアデザイン(以下、DDD)は、2023年11月に「心が動く消費調査」を実施。その結果をもとに、久しぶりに世の中が前向きになった今の消費者の「現在地」を紐解きました。
DDDは定期的に実施している心が動く消費調査の中で、心が動いた消費経験の有無やその内容についてジャンルを問わず定点観測しています(調査概要は文末の注釈欄をご参照ください)。
2023年11月実施の調査では「(心が動く消費が)いずれかあった」という回答が84.9%をマークし、依然高水準であることがわかりました(図表1)。前回2023年5月調査時のスコアは84.1%だったので、ほぼ同水準となっています。
コロナウィルス五類化の直後、消費者の消費マインドが大きく改善した後の反動減で、今回はスコアが低下することも想定されていましたが、結果はほぼ横ばいとなりました。昨今、様々な地政学的リスクや物価高、伸びない実質賃金など社会全体の先行き不透明感が顕著ですが、総論的には「心が動く消費」という枠組みの中では消費者のマインドがこれらの負の要因にそれほど左右されなかったと言えます。まずこの点は注目に値するでしょう。
また、今回から「心が動く消費調査」では10代(15~19歳、本記事では以降10代とする)も調査対象に。10代の消費や価値観についても分析を試みています。
図表1で興味深いのは、10代のスコアが特に高くなっている点です。男性で94.8%、女性で95.6%をマークしており、これらの層はほぼ全員が何らか心が動く消費経験があったという結果になりました。10代は他の年齢層に比べると可処分所得がそれほど高くないと思われるので、具体的にどんな商品・サービスに心が動いたのかが気になるところです。
DDDが聴取したフリーアンサーから、10代消費者の回答をランダムにいくつかご紹介したいと思います。
・「電子書籍『0からのOS自作入門』。パソコンの仕組みが知りたかった」
・「特急券(B席特急券)。毎日朝早く電車で向かわなければならないが、その日はバイトがあってお金に余裕があった。少し遅い時間で特急を取るために購入して乗ったら睡眠もできてとてもよい1日を送れるようになった」
・「松島聡個展。個を大事に、自分らしさとは何かというテーマの個展だったので、作品を通して自分だったらどんな風に考えるだろうということや松島聡くんはどんな思いでこの作品を作ったのかを実際に見たかった。最近、自分らしさとはなんだろうと考える時間が増えてこの先なにをやりたいのかわからなくなっていたときにちょうど松島聡くんの個展のテーマに胸が熱くなり自分を見つめ直すきっかけにしたいと思えたから」
・「ぽかぽかボアジャンバー。推しのグッズを身にまとって、幸せな気分になりたかったから」
上記は具体的な回答の抜粋ですが、いずれも消費に向かう際に何らかの原動力が存在していることがわかります。これらの例で言えば、探求したい気持ちだったり、財布に余裕が出ていたり、自分の見つめ直しだったり、推しの存在だったり。それぞれ違いはあれど、調査者の中に「心が動く消費に繋がる源」が存在したことは間違いありません。