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ブランディング先進企業に学ぶ、マーケティング戦略としてのブランディング

CFOはアロケーションをどう考えているのか。資生堂のCFO横田氏が語るマーケティング×ファイナンス

 書籍『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』の著者・木村元による本連載。この連載では、著者が本書を執筆する上で影響を受けてきた方やブランドマーケティングの進展を考える上で話をしてみたい方と、対談を重ねていきます。第4回は、著者のユニリーバ時代の先輩でもある資生堂のCFO 横田貴之さんを訪問。ユニリーバ ロンドン本社では、ヴァイスプレジデント ファイナンス グローバル ヘアケア カテゴリーを務めた経験があり、現在は資生堂のCFOとして指揮を執られている横田さんに、マーケティング×ファイナンスをテーマにお話をうかがいました。

ブランドはプロモーションだけでは創られない

木村:ユニリーバ時代のロンドンで、横田さんには本当にお世話になりました。「マーケティングはお金を使い、ファイナンスはお金を守る」などと揶揄されることがありますが、横田さんは当時からマーケティングにとても理解のある方だと思っており、柔軟な判断をされる姿が印象に残っています。今日は、CFOの視点からブランディングとマーケティングについてお話をお聞きしたくお訪ねしました。

 資生堂さんは、いずれもブランドでも、プロダクトから売り場作り、広告など隅から隅までブランディングを徹底されています。横田さんは現在CFOとして、マーケティングへの投資判断にどのように関わられているのでしょうか?

横田:資生堂全体におけるリソースの最適な配分を、ブランドの優先度も含めて考えていくのが私の役割です。対マーケティングでは、たとえば、限られた予算をどう効率的にマーケティング活動にアロケーションしていくか、プロモーションとブランドビルディングへの投資比率をどうするか、マーケティング予算がもっと必要ならばそれ以外の費用をいかにセービングするかなど、全体的な方向性を考えていきます。その先にある各ブランドでのアロケーションやトラッキングは、各ブランドチームで行っている形ですね。

株式会社資生堂 取締役 エグゼクティブオフィサー チーフファイナンシャルオフィサー(最高財務責任者) 横田貴之氏
株式会社資生堂 取締役 エグゼクティブオフィサー
チーフファイナンシャルオフィサー(最高財務責任者) 横田貴之氏

慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、住友商事、ダウ・ケミカル日本、GE東芝シリコーン(現モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)を経て、2007年にユニリーバ・ジャパンに入社。2011年にユニリーバ・アジア・プライベート・リミテッドのファイナンス ダイレクター グローバル マーケティング オペレーションズに就任し、2012年8月よりユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの代表取締役を務める。2019年11月に資生堂に参画、2021年1月より現職。

木村:企業活動において、ブランディングは特に投資判断が難しい領域であると思うのですが、横田さんはファイナンスの観点から企業活動におけるマーケティング、ブランディングへの投資をどのように考えられていますか?

横田:おっしゃる通り、マーケティングへの投資判断は非常に難しいです。P&Lのラインでファイナンスを見ていく際、一番難しいのがマーケティングの領域かもしれません。

 たとえば、マーケティングROIの良し悪しを判断する時、何を基準にするとよいでしょうか? プロモーションに予算を大きくかけるほうがリターンはすぐに返ってきますから、単純に数字(売上)だけを見るのであれば、売上向上を目指してプローションに予算を寄せることになると思います。ですが、そのプロモーション施策により、ブランドがどれだけ育つかはケースバイケースです。プロモーション施策によっては、短期的な効果になるケースもあると考えられます。企業としてのゴールを最終的に達成するために、アロケーションのバランスを見つけていくことが、我々の仕事だと思っています。

木村:「企業としてのゴール」というところが鍵になりそうです。私はブランディングは経営と表裏一体であると考えており、マーケティングの上流戦略、4Pや6Pの部分が結局は重要になると考えています。

株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏 ユニリーバ・ジャパンに2009年に入社。約14年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360度のプロモーションからグローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にて、ダヴヘアのグローバル全体のブランド戦略をリード。その後、ユニリーバ・ジャパンでのスキンケアカテゴリー統括とグループ子会社のラフラ・ジャパンの代表取締役を兼任し、PMI後のV字回復を達成。2021年より株式会社Brandismを創業し現職。BtoBからBtoCまで、国内外の多様なクライアントのブランド戦略立案や経営戦略を支援。著書『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』が2023年12月に刊行
株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏 ユニリーバ・ジャパンに2009年に入社。約14年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360度のプロモーションからグローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にて、ダヴヘアのグローバル全体のブランド戦略をリード。その後、ユニリーバ・ジャパンでのスキンケアカテゴリー統括とグループ子会社のラフラ・ジャパンの代表取締役を兼任し、PMI後のV字回復を達成。2021年より株式会社Brandismを創業し現職。BtoBからBtoCまで、国内外の多様なクライアントのブランド戦略立案や経営戦略を支援。著書『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』が2023年12月に刊行

横田:そうですね。ブランドはプロモーションだけでは作れません。ブランド価値の創造にはイノベーションやCXなどすべてが複雑に絡み合ってきます。たとえば、マーケティング活動での投資判断で特に難しいのが「アンバサダーの起用」なのですが、広告に起用するアンバサダーのアウェアネスと好感度が良いからと言って、それがそのままブランドイメージに繋がるかというとそうではありませんし、購買が上がるか否かもわかりません。

 何か一つをやれば良いわけではなく、あらゆる角度からブランディングを行って、初めてブランド・エクイティというものが徐々にできていくのだろうと。となると、マーケティングでは、4Pなり6Pなりを起点に全体を作っていくことになるのではないでしょうか。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/01/19 09:15 https://markezine.jp/article/detail/44322

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