国内マスメディアも続々参入。音声コンテンツが注目される理由
MZ:米国では音声コンテンツが飛躍的に成長しているとおっしゃいましたが、近年グローバルを中心に音声広告・コンテンツへの注目が高まっている背景を教えてください。
八木:まず、ワイヤレスイヤホンなどハードウェアの進歩が挙げられます。コードといった物理的な制約がなくなり、どこでも気軽に音声コンテンツを聴けるようになりました。また、動画コンテンツが多く作られている中で音声コンテンツの新しさに惹かれ、音声広告市場に参入するケースも多いです。
加えて、コロナ禍で自宅時間が増えたことで、radikoなどのデジタルオーディオを聴くリスナーが増加したことも理由の一つだと思います。
MZ:ソフト面ではどうでしょうか。
八木:海外ではコンテンツイノベーションが頻繁に起こり、そのたびに市場も拡大していきました。たとえば2014年に登場した「Serial」はドキュメンタリー番組の音声版のようなもので、ポッドキャストの番組の中で一番聴かれたコンテンツといわれています。
プラットフォーム側の動きも活発化しており、YouTubeでも2022年からオーディオ広告を始めました。これは、一定数のユーザーがYouTubeで動画コンテンツを注視せず「ながら聴き」をしている状態が多いことに起因すると考えられます。音声コンテンツは動画コンテンツの劣化版という位置付けではなく、「ながら聴き」に強いなど独自の特徴を持つメディアなのです。
MZ:日本市場についてはどう見られていますか。
八木:現在、米国などの海外に比べると、日本のデジタルオーディオ市場はまだアクティブユーザーの数や広告市場としては大きくありません。しかし、デジタルオーディオ市場への関心の高まりは感じています。
たとえば、SpotifyはPodcastの広告ネットワークの日本での展開を発表しましたし、国内のラジオ局や大手新聞社などのマスメディアが音声領域に次々と参入しています。ブランドロイヤルティの向上や購入前の商品理解、認知拡大など様々な目的で活用できることから、企業の関心も高まっています。
今後はハードウェアの進歩などにより、生活時間の中で人々が音に触れる時間はますます増えていくと思います。海外のみならず、日本のデジタルオーディオ市場もさらに伸びていくことでしょう。
Z世代にも人気!「生活時間を拡張できる」音声コンテンツ
MZ:音声コンテンツならではのメリットや特徴について、詳しく教えてください。
八木:最大の特徴はやはり、先ほどもお話しした「ながら聴き」ができることでしょう。仕事や家事など他のことと並行して聴くことができるため、音声コンテンツはユーザーの生活時間を拡張できるメディアだと考えています。
訴求したい製品・サービスに合った適切なタイミングで接触できれば、大きな広告効果やブランド想起につながることも期待できます。例として、スポーツ用品メーカーが走りながら聴けるコンテンツを作ったり、食品メーカーが料理をしながら聴ける配信をしたりというシチュエーションが挙げられますね。
また、連載記事『“ながら聴き”や長期記憶、没入感に強み!様々なデータから見る「音声広告」ならではの特徴と効果検証』でも触れているように、音声は長期記憶につながりやすい点もメリットです。これを活かして、サービス内容をビジュアルで認識されづらい金融・保険・証券・人材採用などの無形商材でも、効果的な訴求やブランディングが可能となります。
身近な活用方法として、音で商品をイメージする「ソニックブランディング」を活用しているケースも多いですね。特定の音を聴いてブランドや商品をすぐ連想する体験は、誰もが経験していると思います。視覚と聴覚両方に訴える動画よりも、聴覚のみに絞って訴求することで、より強い印象を付けることができるのではないでしょうか。
米国電通の調査では、音声はテレビよりもアテンションが128%高く、動画よりブランド想起率が14%高いというデータも出ています。
MZ:効果的な訴求対象としては、どういったユーザー層が挙げられますか。
八木:音声コンテンツは圧倒的にタイムパフォーマンスが良く、多くのZ世代の支持を集めています。彼らはコロナ禍で孤独感を感じていた世代でもあるので、つながっている感覚を得られる音声SNSも人気を博しています。
この他、学習目的で音声コンテンツを活用するZ世代も少なくないですね。これはビジネスパーソンにおいても同様で、運転中などに利用する方が多いです。
