“興味の赴くまま”に学べるように デジタルで環境整備
有園:先ほどのお話にあった「単元別にコードを振って、個別最適な教育を提供する」という方向性は、前回の対談でも聞きました。その進捗状況や課題についてはどうですか。
吉田:学習指導要領の単元別・項目別にコードを付けるところまでは、文科省で実施しています。コード自体は出来上がっているのですが、学校指定の教科書や教材を超えて、いろいろな教材をコードから呼び出したり、学習履歴がわかるように管理したりするところまでは進んでいません。
有園:学校指定以外の教材を紐づけるのは難しいですよね。それでも、やるべきだと思うのはなぜですか。
吉田:学びの素材はいろいろなところにあります。それらを組み合わせて、個別最適な学びを提供していくことが必要です。そうすれば、子どもたちは興味の赴くままに学習をどんどん進めることができます。デジタルでそんな環境が、より実現しやすくなっているのです。
有園:興味の赴くままに学ぶ。とても良い言葉ですね。デジタルによって、自分の興味がある分野と接点を持ちやすくなればすばらしいですが、まだ課題もありそうですね。

学習データ活用を取り巻く様々な課題
吉田:取り組みが進んでいない理由はいろいろとありますが、まずは、個人の学習データの活用がまだ始まったばかりだということです。個人のIDをどう発行するか、学習データをどこに蓄積するか、アクセスできる人は誰なのか――といった難しい課題があり、きちんと整理しなければいけません。
有園:ハードルは高そうですね。IDの課題が解決できれば、個人の学習の状況がわかるポータルサイトやマイページを作れます。本人だけでなく、学校の先生もアクセスできるとすると、そこにまた課題が出てきますね。
吉田:学校外の塾などの成績も反映されるとしたら、学校の先生も見るべきだという考え方もありますし、そうではないと考える人もいるでしょう。
有園:個人が興味をもって学んだこともデータとして見られるようになると、民間企業のマーケティングの要素も入ってくると思います。ビジネスチャンスだと思う人もいるのではないですか。
吉田:企業が多様な教材を提供すること自体は歓迎すべきだと思います。そもそも、教科書を作っているのも民間企業です。学習指導要領で内容は決まっていますが、どういう形で教科書に落とし込むかというのは、企業の創意工夫によるものです。それと本質的には変わらないのではないでしょうか。