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業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

恩藏教授に聞く、AI×広告効果計測の最前線 テレビ広告のバイイング&クリエイティブの未来は?

「画面を注視しているかどうか」を広告枠の選定基準に

恩藏:従来の視聴データと比べると、かなり精度が高くなっているのがわかりますよね。また、現在の視聴態度に対応できる計測手法であることも注目したい点です。

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従来の視聴データとREVISIOの注視データの比較(REVISIOの公式Webサイトより)

恩藏:現在の生活者は、同時に複数のメディアデバイスにアクセスすることが多くなっています。特にスマホをいじりながらテレビを観るというのは、よくあるのではないでしょうか。

 そうなると、リビングでテレビのスイッチが入っていても、本当にテレビに目線が向けられているかどうかはわかりません。こうしたシーンでは、従来の測定手法ではどうしても限界がある。いわゆる「視聴質」と呼ばれるような、新たな指標とその測定手法の開発が求められてきた背景です。

 もっとも、精度高く測定できるツールがあるだけでは事業にはなり得ません。ビジネス・パーソンはもちろん、私たち研究者も、それをどう活用するかという点に注目しなければいけません。

MZ:計測したデータの用途について伺えますか?

河村:メディア面の選定が主な活用方法の一つです。広告主の視点では、届けたいターゲットに届くどうかの基準として、出稿する提供番組を選ぶあるいはスポットを選ぶというタイミングで我々の視聴データが活用されます。特定の層に観られているかわかる視聴データがあるわけですから、想定するターゲットが観ている番組や時間に寄せて買い方を最適化していけるんです。

 また定常的に視聴データを観察することで、一つのクリエイティブが繰り返し観られているなか、効果の摩耗がどのように起きているかといった分析にも活用ができます。これにより、流す頻度を減らしたり、それまで無駄撃ちになっていた分の予算をCTV広告に付け替えたりといった予算最適化も可能になります。CTVでの広告配信は既に注目されていますが、我々の測定手法であれば、地上波とCTVの視聴計測を同じ調査世帯で行っているため、地上波のテレビCMもCTV広告も同じ指標を用いて横比較ができます。そのため、現在メディアバイイングに携わる方にとって判断を助けられる仕組みになっています。

1秒ごとの視聴態度から観られるクリエイティブの作り方

河村:現在研究を進めているもう一つの領域が、クリエイティブへの活用です。我々の視聴データでは1秒ごとの反応を蓄積しているため、どのシーンで画面を観たのかがわかります。観られているほうが、認知率、想起率、購入意向の上昇といった広告効果が得られるなか、「観られるクリエイティブをどのように作るか」という視点に立ち、視聴データを基にクリエイティブの定量的な価値を計れる仕組みを検討しています。

 これまでもクリエイティブに関する分析は、調査パネルに集まって視聴してもらい、質問する調査方法などがありました。しかし、本来の視聴者と同様に、日常生活の自然な状況でデータを取り続けられる点は他にはないデータの特長です。

MZ:クリエイティブ面の研究について具体的な例はございますか?

河村:たとえば「クリエイティブにどのような音声があれば、視聴者が画面に振り向くのか」といった研究は既に進めています。視聴者は音と音に間が空くと画面を観ることがデータからわかっているのですが、これも定量化することで、どれほどの間が最適なのかといったことがわかるようになります。

恩藏:私がREVISIOさんの視聴データを観ていてとても驚いたのは、15秒という同じ時間の長さのクリエイティブでも、その15秒のなかで注視されている箇所がクリエイティブによって異なることです。最初だけ注視率が高く、その後は段々と低下していくケースもあれば、V字のように一時的に下がってから何らかの仕掛けで再び上がるケースもあります。つまり、15秒や30秒という長さのなかでも様々な観られ方が存在するのです。

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恩藏:音でいえば、激しい音楽あるいは静かな音楽が流れていたり、会話シーンあるいは矢継ぎ早なトークがあったりと様々です。それぞれの広告の視聴データを何百、何千と収集し、ビッグデータとして分析すると、どのような音使いが広告の視聴率、ひいては広告効果を高めるのかが見えてくるはずです。映像の分析は負荷が大きいため、音声よりも少し先の研究になりそうですが、そこまで進めば広告業界の仕組みを大きく変えるような知見を導出できるでしょう。

河村:現在は一つひとつのCMの視聴データから目検で傾向を探るという段階ですが、将来的には機械学習から傾向を抽出することで、どのような要素の組み合わせが良いのかを把握できるような仕組みにしたいと考えています。

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将来的には生成まで視野に 表現の根拠を科学で得る

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/03/12 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44972

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