変わった味のケーキ屋さんで終わらないために
飯高:最後に、Mr. CHEESECAKEの課題もうかがえればと思います。
田村:Mr. CHEESECAKEが有名になり、シェフ田村浩二として表立ってキッチンに立つことが減ったので、ブランドの生まれた背景が伝わり切っていないことですかね。

Mr. CHEESECAKEのチーズケーキは、バニラ・レモン・トンカ豆の3つの香りを組み合わせた、懐かしさと新しい美味しさを楽しめる味わいになってます。また、僕は多くの方に受け入れられる味を作りつつ、「こんな味があるんだ」と新たな味に出会う体験も提供したいと考えています。
シェフとして、様々な食材と向き合ってきた僕だからこそ、お届けできる美味しさがあると思っています。ブランドの生まれた背景や、味わいのストーリーなどを少しでも知ってもらえたほうがより美味しさを楽しんでいただけると思うので、うまく伝えていけたらなと考えています。
実際、25歳以下の若いシェフが僕をMr. CHEESECAKEの代表として知ってくれていても、料理人だと知らない人も増えています。これは実際にレストランに立っているわけではないので仕方ないなと思うのですが、もっとブランドの事を丁寧に伝えていきたいなと個人的には感じています。
飯髙:なるほど、シェフということを知ってもらうことで、作り方や味わいに説得力が増すということですね。
田村:そうなんです。どういう形で伝えていくのがいいのか考えているところです。
最近の取り組みだと、たとえば「Mr. CHEESECAKE Cream Brew Coffee(ミスターチーズケーキ クリームブリューコーヒー)」という商品がわかりやすいです。Cream Brewはクリームにコーヒーを漬けることで、コーヒーの香りだけを抽出する手法です。コーヒーが苦手な方にも美味しく感じていただけるような味わいになっていると思います。美味しさとは別で、コーヒーや料理などに詳しい方には、Cream Brewという手法に興味を持ってもらえると思います。
飯髙:味を楽しんでもらいつつ、料理の知識がある人に意識を向けてもらえるようにしてるんですね。
田村:はい。今後もいろいろと模索して、美味しい体験を届けていきたいですね。
編集後記:飯髙悠太
今では誰もが知っている人気のチーズケーキ「Mr. CHEESECAKE」。
立ち上げた背景に、「もっと一般の人に自分の料理を楽しんでもらいたい」、「自分の母にもピンとこない料理を作るってどうなの?」ということから、自分が本当に届けたいものは何か?を自問自答して生まれた。
料理人として、せっかちな性格から気づいた冷凍・半解凍・全解凍の味の違いから、結果として味の変化を楽しめる冷凍チーズケーキに。私も1ユーザーとして利用させて頂いているが、正直甘いものが得意ではない。ただ、冷凍・半解凍なら美味しく食べれることを知った時の驚きは今でも覚えている。
「クオリティとスピードはイコール」という考えから、徹底的なタイムマネージメントが成り立っている。クオリティとスピードを両立している秘密には、ストップウォッチの存在があったことは多くの企業が参考にできる点だと感じる。
「Mr. CHEESECAKE」として本来はお客様がいつでも買える状態を理想にしていた。そこを追求はしてきたのだが結果として、生産が間に合わないため限定的な販売になってしまっていた。希少性で販売するブランドも増えたが、田村さんは常にお客様を第一に考え、毎日販売にこぎつけている。売れることも大事な要素なのだが、改めて顧客を一番に考えることの重要性を目の当たりにした。
香港進出を皮切りに、「Mr. CHEESECAKE」が世界にどう受け入れられていくのかを注目していきたい。