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【100号特集】24社に聞く、経営構想におけるマーケティング

目指すは「シェアNo.1」ではなく「唯一無二」、花王がマーケティング戦略を変えた背景

「消費者」ではなく「生活者」、従来の方針を大幅に変更

――西口様は、マーケティング組織が果たすべき役割や、経営においてマーケティングがもたらすべき価値について、どのようにお考えですか?

 様々な考え方があると思いますが、私はマーケティング組織を「生活者の日々の暮らしに溶け込む商品を届ける中心的な役割」と「事業成長を牽引する役割」の担い手だと考えます。

――その役割を果たすため、特に力を入れている活動はありますか?

 まずマーケティング部門では「消費者」ではなく「生活者」という言葉を使うようになりました。消費というと商品の購入・使用を中心に捉えがちですが、現在は生活者の24時間すべてを捉える必要があります。たとえば洗濯用洗剤の場合「お店で商品を購入する」「使用時に洗濯機の前にいる」と考えるだけでは不十分です。他のことをしながらスマホで商品を購入したり、遠隔操作で洗濯機をオンにしたりする方もいるでしょう。

 このように生活者を軸に考えるようになったことで、従来のマーケティングから大幅に方針が変わりました。

 まず、商品の機能性といった実態だけでなく、人間の感情を深掘りするようになりました。人は24時間で様々な感情を持つものです。シチュエーションによって生活者の感情は変わり、それにともなってニーズも変化します。4月発売の新ヘアケアブランド「melt(メルト)」はまさに感情に注目したことで誕生した商品です。近年、「自分の心と身体を大切にしたい」という気持ちが高まりを見せています。私たちはこれらの感情に注目し、音・泡・感触・香りで様々な感覚に働きかけることで、髪のケアだけでなく、ヘアケアタイムを「自分を大切にする時間」に変える、新たな提案をしています。

 そして、仕事の進め方も変えました。従来はマーケティング担当から、研究者や工場で働くメンバー、デザイナー、PR、販売といった各担当がバケツリレー方式で進めることが多い状況でした。この場合、各メンバーは自分の担当業務を注視する傾向があります。現在はマーケティング担当を中心にスクラムを組み、部署や国、言語に関係なくメンバー全員が集まりディスカッションしながら進める取り組みが広がっています。以前からこのような取り組みはしていましたが、最近、より確かなものになりつつあります。お互いの意見を聞くことで視野が広がり、アイデアも数多く生まれるため、関わった全員が自信を持ってお薦めできる商品を生活者に届けられるようになりました。結果的に商品を届けるまでのステップもスピーディーに進められるようになっています。

――もう1つの役割である「事業成長を牽引すること」の実現には、組織や人材の育成や強化が不可欠だと思います。こちらの取り組みはいかがでしょうか?

 たとえば海外で勉強できる仕組みを大きく変更しました。人数を増やしただけでなく、内容も実践重視になっています。選抜方法についても、以前は「英語が話せるか」「テストのスコアが高いか」を重視していましたが、現在はグローバル・シャープトップに適した志の有無、「海外で何をしたいのか」を重視しています。

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「このブランドだから購入する」選ばれ続けるために

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/20 11:03 https://markezine.jp/article/detail/45367

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