マーケターに求められる3つの要素
──マーケティング人材・マーケティング組織については、どのように強化を進めていますか?
活躍できるマーケターには3つの要素が必要だと考えています。専門性の高い「職種の力」、「ビジネス領域に関する知見」、そしてビジネス全般の「基礎力」です。
1つ目の「職種の力」は、専門性を持って施策全体を理解し、判断できる能力。たとえばテレビCMの施策にしても、デジタル広告の運用にしても、特化したスキルが必要です。パートナーの力を借りることも多いですが、外部に任せきりではなく当社でも仕組み全体を理解して、どこまでを当社が担うべきか判断するよう心掛けています。
2つ目のビジネス領域に関する知見は、当社で言えば「ファッション」や「小売り」「Eコマース」といった業界にまつわる専門性のことです。これは当社に蓄積された知見があるので、社内のリソースを活用できます。
3つ目のビジネスの基礎力について、私は特に数字と言葉を扱う力が大事だと考えています。数字については、「数字の裏の意味を想像する力」を重視しています。マーケターは、データを扱う数理能力も大事ですが、数字の裏には人(顧客)の気持ちの動きがあるはずです。私は「1億円の売上の裏には1万円のシャツを買った1万人それぞれの想いがある」という話をするのですが、そういった数字の向こう側を思い描けることが、中期的にビジネスを捉える上では重要だと考えています。

また、「伝わる言葉を扱う力」も大事です。これは文章力というより、「基本的に言葉は思ったようには伝わらない」という前提に立っているかどうかですね。極論ですが、こちらの言い分が思いどおりに理解してもらえると最初から思い込んでいる場合と、なかなか真意が伝わらない中でもいかに確実に伝えるかを考えている場合では、コミュニケーションの精度に大きな違いが生まれると考えており、それは施策のクオリティにもダイレクトに影響すると思います。
──そういったスキルを備えた人材を採用するのでしょうか?
たとえば当社ではカスタマーサービス部門からマーケティング部門に異動したメンバーが活躍しています。カスタマーサービスは、お客様からうかがった限られた情報から状況を理解して、最短距離で解決方法を伝える業務です。広いビジネス理解はもちろん、お客様の言葉から真意を探り確実に伝えるスキルが求められるので、言葉を扱う力にも長けていることが多いと感じています。外部から採るべき人材もいますが、社内での人材活用も重要だと実感しています。
また、新卒社員のジョブローテーションも実施しており、マーケティング本部では、マーケティングのミッションをしっかり伝えています。「一人でも多くのユーザーに使っていただき、満足していただき、また利用したいと思ってもらう」という考えは全社で意識するべきです。どの部署に行ってもこの意識があることで、ZOZO全社としてのマーケティング力が向上すると思っています。
──最後にマーケティング部門において現在掲げられている目標や、今後の展望についてお聞かせください。
繰り返しになりますが、マーケティングは「いかに多くのユーザーに使っていただき、満足してもらえるか」だと思っています。数字も大事ですが、ここにしっかりこだわりを持った上でアクションを考えていきます。
ZOZOTOWNは今年の12月で20周年を迎えます。20年間、ユーザーやブランドなど多くの方々に支えてもらいました。ZOZOらしい特性を活かして、ファッション業界に貢献していきたいですね。「MORE FASHION × FASHION TECH 〜ワクワクできる『似合う』を届ける〜」という経営戦略を実現するために、ファッション性とテクノロジーの強さを掛け合わせて、「ファッションの『こと』ならZOZO」を目指していきます。
