ファーストパーティーデータ時代に到来するチャンス
有園:博報堂DYグループは、昔からテクノロジーに力を入れています。それを踏まえて、ファーストパーティデータの活用方針についてもお聞きしたいです。
小坂:ファーストパーティデータを活用しないといけないのはもちろんですが、エージェンシーとしては、マーケティング目的を踏まえた必要データ、そのデータの適切な収集方法、効果的な活用方法などをしっかり整理し、計測設計しなければなりません。
これらをおこなうには、顧客体験を科学するための具体的な仕掛けを戦略的に考えることが必要です。ただ、これをするには手間・時間・費用など、多くのコストがかかるため、企業には「投資した分のリターンが得られるのだろうか」という悩みがつきまといます。
わたしたち博報堂DYグループは、必要なファーストパーティーデータを考える、取得する、活かすという点でフルサポートしています。さらに企業にとっての顧客を生活者として多面的にとらえる“生活者データ”を保有します。この博報堂DYグループオリジナルのデータ基盤と企業のファーストパーティーデータを結びつけることで、企業の事業成長に真に貢献できる基盤づくりができると考えています。
クライアント企業側から、ファーストパーティーデータの活用に関して相談される機会は着実に増えており、当社からクライアント企業に常駐してサポートするケースもでてきています。また、データ活用の領域にとどまらず、事業計画の立案や新規事業の考案など、クライアント企業の内部に入り込んでサポートするケースも増えています。そういう意味では、ファーストパーティデータ活用が本格的に進むこのタイミングは大きなチャンス。サポートできる人材もそろえています。勝負どころだと思っています。

EQもカバーできるマーケティングが大事
小坂:クリエイティブ関連の取り組みでは、「ATA(Attention-to-Action)感情トリガークリエイティブ」という、生活者に"広告疲れ"を起こさせない新しいデジタル広告のクリエイティブ・プランニングメソッドを開発しています。デジタル領域ではクリエイティブの量を担保することも必要ですが、一方で生活者のインサイトを捉え、「Attention(興味・関心)を与える訴求」も、高パフォーマンスを発揮する事例が出てきています。
実際に、いくつかの商材においては、お得さや商品特性などを訴求したクリエイティブよりも、共感したり記憶に残るような演出や企画に振り切ったクリエイティブが成果を残した事例が多く出ています。
有園:そのお話を聞いてイメージしたのは、EQ(Emotional intelligence Quotient)とIQ(Intelligence Quotient)の関係性です。IQで捉えられる部分は、データさえあればAIで処理できます。しかし、デジタルデータにならない限り、AIで最適化できません。人によって物事の見え方や気持ちは異なり、それらはデータ化するのが難しい。EQもカバーできるマーケティングが大事だと思いました。
小坂:博報堂DYグループには、そうしたデータ化できない人の感情を重要だと考える文化があり、それをデジタルと掛け合わせて取り組んできました。当社にも博報堂のクリエイターが来てくれていて、素晴らしいクリエイティブを作っています。
たとえば、世界的な広告賞「カンヌライオンズ」を目指せる広告が最もパフォーマンスが高い状態で、かつ、クライアント企業の事業成長につながる状態になっていけば、当社は会社として圧倒的に強くなれると思っています。
有園:たしかに、クリエイティブのクオリティーの高さは、昔からも博報堂DYグループの大きな強みのひとつですよね。本日はありがとうございました。